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  • 課題解決のためのデータ活用の始め方

事例が示すデータ活用の実際と得られる価値【第2回】

若尾 和広(primeNumber データイノベーション推進室 室長)
2025年10月22日

前回は「なぜ今、データ活用が必要なのか」について、その定義と重要性を整理しました。しかし、理屈では分かっていてもデータ活用の価値について実感が持てず初めの一歩を踏み出せないということもあるでしょう。今回は、企業のデータ活用において、特に効果が期待できる領域での事例を紹介しながら、データ活用の価値をより具体的に解説します。

 第1回では、データ活用とは単なる可視化やレポート作成ではなく、データに基づいて実際のアクションを起こし、それによりビジネスに成果をもたらすまでの一連のプロセスだと説明しました。

 データ活用に向けた企業の取り組みを見渡すと、営業/マーケティング領域での事例が最も多いようです。これは、顧客データや売上データといった比較的取得しやすいデータが存在し、かつ、その効果を「売り上げ」という明確な指標で測定できるためです。

 以下では営業/マーケティング領域の中から、マーケティング活動と、昨今のインフレ下にあって重要度が高まっている価格設定の事例を紹介します。

マーケティング活動の事例:ターゲティングにデータを活用する

 営業/マーケティング活動においては、十分な顧客理解と適切なターゲティングにより、マーケティング活動の効率を大きく高められます。従来の「誰にでも同じメッセージを送る」というアプローチから「適切な人に適切なメッセージを送る」というアプローチに変えることで改善効果を得られます(図1)。

図1:データ活用によるターゲティングの効果

 ある金融サービス企業は、メールマーケティングの効果を高めるための「フォロープログラム」を実施しました。同社も従来は、メールを一律に配信していましたが、データに基づいてターゲットを絞り込み、適切なチャネルを選択したうえでメッセージを送る手法を採用したのです。これにより、購入者の再購入率は、従来の0.7%未満が、2〜8%以上にも高まりました。

 別の事例では、年会費が必要なゴールドカードへの切り替えを促すメールマーケティングにおいて、メール開封者と未開封者の比較では、開封者の方が約4倍高い切替率を示しました。