- Column
- 課題解決のためのデータ活用の始め方
データ活用の第一歩は企業の“健康診断”から【第5回】

前回は、データ活用を成功に導くための組織体制と人材戦略について解説しました。今回は、データ活用プロジェクトを始める時に必ず実施すべき「現状調査」について解説します。適切な現状調査なしにプロジェクトを進めると、後から大きな手戻りが発生したり、現場で使われないシステムを構築してしまったりするリスクがあります。
データ活用プロジェクトを始める際、多くの企業が「ツールを導入しよう」「データ基盤を整備しよう」と考えることでしょう。しかし、その前に必ず実施すべき重要なステップがあります。それが「現状調査」です。
現状調査はデータ活用に向けた企業の“健康診断”
現状調査とは、自社が現在「どのようなデータを持ち、どのように管理し、どのように活用しているのか」という“現在の状態(As-Is)”を把握するための棚卸し作業です。人間で言えば健康診断のようなものです。現状が、どういう状態になっているのかが分からなければ、改善のための適切な手立ては考えられません。
多くの企業において、特にデータ活用の領域では、会社として現状を把握できていない状況は決して珍しくありません。例えば、最近は使いやすいツールやサービスが増え、情報システム部門の管轄外でさまざまなツールが導入されていることがあります。いわゆる「シャドーIT」と呼ばれる状況です。またCRM(Cutomer Relationship Management:顧客関係管理)やマーケティングのためのシステムが導入されていながら使われていないケースもあります。
こうした状態のまま新しいシステムを導入しても、適切な業務改善、つまりビジネスの生産性の向上・拡大はできません。
現状調査は、リスクヘッジの観点からも重要です。どのようなデータが、どう管理され、誰が閲覧・改変・持ち出しができるのかを把握しておくことは、経営のクリティカルなリスク管理につながります。特に昨今は、個人情報の漏えいや機密情報の内部からの持ち出しなどへの対応が、経営観点でも喫緊の課題になっています。その意味からも定期的な現状調査が重要になります。
定量的な調査項目と定性的な調査項目がある
現状調査では何をゴールに設定すべきでしょうか。大きく(1)定量的に把握すべき項目と、(2)定性的に把握すべき項目とに分かれます(図1)。
定量的に把握すべき項目
・データの量や内容
・使用しているツールやシステムや利用状況
・システムのアクセス数
・データ処理の量
定性的に把握すべき項目
・現在の業務ワークフロー
・各部門が抱えている課題
・外部パートナーとの協業状況
・システムのライセンス期間や更新計画
特に注意が必要なのは外部パートナーとの関係です。業務の一部を外部に委託している場合、社内メンバーでも詳細な作業内容を把握していないことが多くあります。そうした場合は外部パートナーにも直接ヒアリングをし、実際の作業内容を明らかにしなければなりません。
部門長の理解を得たうえで現場を調査する
現状調査は、下記のようなステップで進めていくと良いでしょう。
第1ステップ:定量的な情報の収集
情報システム部門が持っている資料やITベンダーへのヒアリングを通じて定量的な情報を集めます。比較的短期間に集中的に実施できます。
第2ステップ:業務部門長との調整
問題になるのは、人間が動いている部分や、現場が負荷と感じている部分のヒアリングです。ヒアリング自体を嫌がられるケースもあります。そのため、いきなり現場にヒアリングするのではなく、まずは業務部門長に目的の説明やヒアリングを実施し、理解を得ることが重要です。
部門長をプロジェクトの味方につけないと調査はうまく進みません。部門長と意思疎通をしっかり図った上で、現場にヒアリングを依頼する流れが望ましいでしょう。
現場よりも上位のレイヤーでは「似たような業務を別組織でも行っている」といった全社的な視点や「リソースをどこに集中させるべきか」といった経営視点も踏まえてヒアリングする必要があります。
第3ステップ:現場へのヒアリング
現場の社員は自身の業務範囲に詳しいだけに、ヒアリングを通じて改善のアイディアを引き出すことが大事です。彼らからヒアリングした内容を全社視点から判断する必要があります。
