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  • 「知る」から「使う」へ、生成AI活用の最前線

IoTに生成AIを掛け合わせる「AI-driven IoT」で現場のIoTデータ活用を加速

「生成AI Day 2025」より、MODE シニアテックエキスパートの道間 健太郎 氏

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2025年11月12日

労働力不足に起因する課題解決に向け日本企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めている。一方で、業務革新に向けて“可視化”の仕組みを整えても十分には活用できていないという指摘もある。MODE シニアテックエキスパートの道間 健太郎 氏が「生成AI Day 2025(主催:インプレス、2025年9月18日)」に登壇し、そうした課題解決に向けて同社が提案する「AI-driven IoT」について解説した。

 「国内生産年齢人口の減少が著しい。ベテラン技術者の大量退職と新規人材の採用難が相まった人手不足による業務破綻が危惧されている。こうした状況を乗り切るには、作業現場に生成AI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の技術を取り込み、業務負担を大幅に低減させるしかない」--。MODE シニアテックエキスパートの道間 健太郎 氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1:MODE シニアテックエキスパートの道間 健太郎 氏

 その理由を道間氏は「これまで当社は、さまざまなDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援してきたがIoTなどによる“見える化”にカネと時間を投じても、いざシステムが稼働すると、ほとんど使われていないのが実状だ。利用されるのは異常発生時や定期的なデータ集計時などだけで、日常的に利用されるケースはごく少数だからだ」と説明する。

AIアプリとの対話でITスキルを求めずIoTデータの活用を可能に

 その打開に向けてMODEが提唱するのが、同社のAIアプリケーション「BizStack」が具現化する「AI-driven IoT」である。「作業員がAIアプリケーションと対話しながら、既存のIoTデータを活用し現場を多角的かつ容易に可視化する」(道間氏)という。

 「IoTデータを単に取得しただけでは活用に向けた取り組みは道半ばにとどまってしまう。そこから“気づき”を得て何らかの価値を生むには、人による“解釈”が欠かせない」と道間氏は強調する。しかし「データを解釈するためのツールとして一般的なダッシュボードは、センサーや現場の数が増えるほどデータを探す手間がかかり、使いこなすには一定以上のスキルが求められるが、そうした人材は現状、現場において極めて限られる」(同)ともいう。

 だが「そうした状況は生成AI技術により一変する」と道間氏は力を込める。「自然言語で質問すればテキストや各種グラフによる回答が得られる。状況を容易に、かつ迅速に把握できるため、ITスキルを問わずデータ活用を推進できる。建設現場をはじめ、さまざまな現場には既に多数のセンサーが導入されているだけに、多岐にわたる活用を想定できる」(同)とする。

 BizStackの仕組みは、クラウドデータベースを中核に構成されている(図1)。データベースには、企業や業界固有のナレッジやノウハウを含む社内データや、センサーやカメラなど現場にあるIoTデバイスで取得したデータを格納する。

図1:「BizStack」は各種データを格納するクラウドデータベースを中核に、回答を生成する「BizStack Assistant」と、それと連携するチャットツールから成る

 データベースのデータを基に、AIエージェント「BizStack Assistant」が質問への回答を生成。連携するチャットツールを通じて、生成結果を利用者に返す。

 チャットツールについて道間氏は「多くの場面で利用されているユーザーインタフェースであり、特段のトレーニングなしに利用を開始できる」と説明する。「スマートフォンなどチャットにアクセスできるデバイスさえあれば利用でき、トラブル時には対応手順書としても利用できる。現場で両手がふさがっている状況を想定し、インカムによる音声での対話も実現している」(同)という。

 またBizStackの利用では、BizStack Assistantとの対話だけでなく「しきい値を事前に設定すれば、異常検出時のアラート通知にも標準対応する。関連する映像も合わせて転送できるため精緻な状況把握が可能になり、関係者間で画像を共有することもできる」(道間氏)とする。