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  • 日系SDVが世界で勝つための協調と独自性

無人自動運転サービスを実証から事業へと転換し、日系SDVの巻き返しを図る

「SDVサミット2026」より、経済産業省 製造産業局自動車課 モビリティDX室長の黒籔 誠 氏

トップスタジオ
2026年7月7日

米国や中国の新興企業がSDV(Software Defined Vehicle)開発や自動運転の社会実装で先行するなか、日系シェア3割の維持や移動・物流インフラの確保に向けた競争力強化が課題となっている。経済産業省 製造産業局自動車課 モビリティDX室長の黒籔 誠 氏が「ソフトウェア・ディファインド・ビークル・サミット 2026」(主催:インプレス、共催:Open SDV Initiative、2026年6月11日)の基調講演に登壇し、日本が目指す「モビリティDX(デジタルトランスフォーメーション)」の方向性と、無人自動運転サービスの早期事業化に向けた道筋を説明した。

 「SDV(Software Defined Vehicle)開発は、クルマ開発に留まらず、インフラやその他の社会サービスとの連携を一体で捉え、無人自動運転などの関連する体験価値を事業として持続可能に提供するための仕組みづくりまでを見据えなければならない」--。経済産業省 製造産業局自動車課 モビリティDX室長の黒籔 誠 氏はこう強調する(写真1)。

写真1:経済産業省 製造産業局自動車課 モビリティDX室長 黒籔 誠 氏

米中が先行するSDVや自動運転で日本の競争力が問われる

 自動車産業をめぐる変化は多方面で進む。カーボンニュートラルへの対応、人口減少や物流問題という社会的要請、所有から利用へのニーズのシフト、半導体や通信機器のサプライチェーンに絡む地政学リスクなどだ。自動車産業はDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)の両軸で変革を進めている。

 こうした変化のなかで「米国と中国はSDVや自動運転の社会実装で明確に先行している」と黒籔氏は指摘する。米国では、都市部の無人自動運転タクシーが実用化され、自動運転システムの開発を手掛ける米Aurora Innovationなどが無人トラックの商業運行に向けた取り組みを進める。

 中国では、百度(Baidu)が自動運転プロジェクト「Apollo(アポロ)」の下、複数都市でロボタクシーを展開するなど、無人自動運転サービスの社会実装が進む。いずれもSDVや関連サービスを市場投入しているのは、主に米中の新興企業だ。

 一方「日本は投資額で劣り、競争力が伸び悩む一因になっている」と黒籔氏は指摘する。政府の目標は2030年と2035年それぞれでSDVのグローバル販売台数「日系シェア3割」を実現することだが、SDV開発の国際競争が激化している中では決して容易ではない。経産省はこれに対し「(1)SDV、(2)自動運転などのモビリティサービス、(3)データ利活用、の3つの領域を柱に施策を打ち出している」(同)

SDVは社会サービスとつながるための土台

 SDVをめぐる競争は、車両アーキテクチャーの刷新から始まる。ハードウェア中心設計で、発売時点の「完成品」として機能や性能の多くが決まる従来と異なり、SDVは「ソフトウェアのアップデートによって性能を継続的に高め、ユーザーに新たな体験価値を提供していく車両」(黒籔氏)だ。

 その実現には、ソフトウェアとハードウェアを分離し、車両全体をレイヤー(階層)構造で捉え直す必要がある。黒籔氏は「アプリケーション、サービス、ミドルウェア/OS、ECU(Electronic Control Unit)/半導体などの各層に分かれ、世界的にレイヤー化が進んでいる」と説明する(図1)。

図1:SDVがもたらすビジネス価値と車両アーキテクチャーのレイヤー構造

 開発プロセスも変わる。従来型の仕様書ベースの委託発注は、アップデートを前提とするSDVに対応しにくい。黒籔氏は「初期段階からメーカーと開発パートナーが密に協業し、シミュレーションやAI(人工知能)技術も活用しながらアジャイル(俊敏)開発を進める体制が求められる」と強調する。サイバーセキュリティを設計段階から組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」も、この転換と表裏一体にある。

 ただし、SDVの本質は「アップデート可能な車両を完成させることだけに留まらない」と黒籔氏は続ける。レイヤー化されたクルマは「インフラや社会サービスとつながるための土台でもある」(同)からだ。