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  • 日系SDVが世界で勝つための協調と独自性

共通APIによって“開かれた”SDVで、日本の自動車産業は逆転攻勢に出る

「SDVサミット2026」より、Open SDV Initiative/名古屋大学 教授の高田 広章 氏

トップスタジオ
2026年7月28日

サービスベースAPIでクルマの操作を記述する

 一連の制御を支える技術的なアプローチの肝は、APIを「サービスベース」で設計する点にある。

 まず前提として、あらゆる車両にも同じアプリを適合させるため、車両の構成を記述するフォーマットの標準化が必要になる。車の窓(パワーウィンドー)を例にすれば「窓がいくつあり、どこに付き、どんな機能を持つか」や「挟み込みのリスクがあるか」までをYAML形式で記述しておく(図3)。アプリはこの記述を手がかりに、クルマに合わせて動作する。

図3:「YAML」形式による車両のウィンドー構成情報の記述例

 例えば「窓の開度を100にする」と書けば窓が全開になる。これは数値データを書き込む「シグナルベース」の設計だ。高田氏は「車両の状態を取得するには分かりやすいが、アプリから高度に制御するには扱いにくい面がある」と指摘する。

 シグナルベースでは、窓の開度データを監視し続け、100に達したかどうかで動作完了を判断する。もし100に達しなかった場合、それが「まだ動作中なのか」「ほかのアプリに割り込まれたのか」「挟み込み防止機能が働いたのか」を、一定時間の経過(タイムアウト)で推測するしかない。

 サービスベースでは「『窓をこの位置まで動かす(startMove)』という“操作そのもの”をAPIとして用意し、結果はイベントとしてアプリに通知する」(高田氏)仕組みだ。要求した操作が完了しなかったとしても「『ほかのアプリに上書きされたのか』といった理由をイベントの種類から把握できるため、アプリ開発者にとっては扱いやすく、複数アプリ間の調停やロックもしやすい」(同)という。

 サービスベースAPIについては「『既存の車載ネットワークでは実装しにくい』という指摘もあった」と高田氏は話す。APIの背後では、CAN(Controller Area Network)通信によってECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)間で状態値や制御信号をやり取りしている。CANは「サービスの呼び出しやイベント通知といったソフトウェアの挙動を前提にした設計ではないため、サービスベースAPIをそのまま適用するのは容易でない」(同)のが実態だ。

 高田氏は、2025年末から約3カ月かけて「シグナルベースのCANの上でも、サービスベースのAPIが作れるか」を検証し、その結果を仕様書とともに公開した。「トップダウンで作っていると、現場での実装を考えずにAPIが決まってしまうことがよくある。私たちは、本当に実装しやすいAPIに落とし込むことも意識しながら作っている」とする。

価値の境界線は自動車業界自らが引く

 APIは、誰が価値を生み出すかを左右する。アプリと車両の間に引かれる境界線を、自動車業界が主導して設計できるかどうか。そこに独自の価値を守りながらビジネスの主導権を握る日本の活路がかかっている。

 講演の最後に高田氏は、「私たちはサードパーティーの力をクルマの魅力に変え、モビリティのイノベーションを加速していきたい。そのために自動車業界にとって望ましいAPIを作り、それをぜひ日本のOEMにも採用してほしい」と力を込める。