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  • 日系SDVが世界で勝つための協調と独自性

共通APIによって“開かれた”SDVで、日本の自動車産業は逆転攻勢に出る

「SDVサミット2026」より、Open SDV Initiative/名古屋大学 教授の高田 広章 氏

トップスタジオ
2026年7月28日

ソフトウェアがクルマの価値を左右する時代に、自動車業界はどこで主導権を握るべきか。そのインターフェースの設計は「誰が価値を生み、誰が収益を得るのか」という産業構造そのものに関わるという。名古屋大学 モビリティ社会研究所 教授で、組込みシステム研究センター長を兼務する高田 広章 氏が「ソフトウェア・ディファインド・ビークル・サミット2026」(主催:インプレス、共催:Open SDV Initiative、2026年6月11日)に登壇し、主導する「Open SDV Initiative」の取り組みと、インターフェースの鍵を握る「ビークルAPI(Application Programming Interface)」の取り組みについて話した。

 「『インターフェースを決める』とは、その両側を担当する業界や企業との間に、仕事の切れ目を引くことだ。その決め方によっては、どちらの会社が価値を取るのかまでを決定付けてしまう」--。名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 教授で、大学院情報学研究科 附属組込みシステム研究センター長を兼務する高田 広章 氏はこう話す。

写真1:名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 教授で、大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター長を兼務する高田 広章 氏

 例えば、米NVIDIAは、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)とユーザーの間に「CUDA(クーダ)」という開発環境を設けることで、自社が価値と利益を出しやすい構造を築いてきた。高田氏は「SDV(Software Defined Vehicle)用アプリケーション開発における『ビークルAPI(Application Programming Interface)』の設計も、同様の重みを持つ」と強調する。

自動車の価値が「運転性能」から「体験価値」へシフト

 自動車のデジタル化では米国・中国が先行する。米中では、E2E(End-to-End)のAI(人工知能)技術を使った一般道での「レベル2++」自動運転や、無人タクシー「レベル4」のサービス実用化が進む。高田氏は「日本と欧州はこの領域で出遅れている」と指摘する。

 特に高田氏が注視する中国では、現在「自動車で重視される価値が、運転性能(基本機能)から、車内での体験価値へと移りつつある」という。

 数年前、日系OEMは中国でのシェアを落とした時期があった。その後、中国の価値観に適応した車両を投入することで表面上はシェアを立て直しつつあるが「そこには見えにくいリスクがある」と高田氏は指摘する。

 実際、新しい車両には、中国HuaweiのIVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)や、AIスタートアップの中国Momentaの自動運転といった中国の技術が数多く採用されており「日本のTier1部品メーカーの比率が下がっている」(高田氏)という。OEMのシェアは変わらずとも「日本の技術のシェアは確実に下がっている。これは非常に怖い」(同)

 市場の価値がシフトすれば、これまで高い競争力を誇った企業でも次第に存在感を失っていくこともあり得る。「構造的にもうからない構図ができかねない」(高田氏)からだ。

更新されるSDVからサードパーティーに“開かれた”SDVへ

 高田氏はSDVの進化を段階でステップ0からの3段階で捉える(図1)。OTA(Over The Air)で機能を追加・更新できるだけでは、まだステップ0に過ぎない。「継続的な更新によって車両の振る舞いがバージョンアップし、ユーザー価値につながって初めてSDV(ステップ1)と呼べる」と高田氏は説明する。

図1:SDV(Software Defined Vehicle)が発展する3つの段階

 米Teslaや中国の主要OEMは「ステップ1に達している」と高田氏はみる。一方日本のOEMは「定期的なバージョンアップにはまだ達してない」(同)

 ステップ2となるのが「オープンSDV」だ。「サードパーティー製のアプリを、スマートフォンのアプリストアのように後からインストールできる車両」(高田氏)を指す。

 これを、産業全体で価値を生む「Ecosystem-enabled SDV(エコシステム型のSDV)」とも表現する。ゲームやアニメ、音楽・動画配信といった日本が強みを持つコンテンツを車内体験に持ち込めれば、渋滞や充電待ちの時間も価値に変えられる。Open SDVは「サードパーティーの力を車の魅力に取り込む構想」(高田氏)でもある。