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  • 日系SDVが世界で勝つための協調と独自性

独ボッシュ、SDVの協調開発に向けたオープンソース基盤を広める

「SDVサミット2026」より、日本法人 技術戦略・エンジニアリング統括の森田 泰弘 氏

トップスタジオ
2026年10月19日

OSは「競う対象」から「共通基盤」へ

 これらの機能を1社で開発し続けるのは現実的ではない。スマートフォンやPCの場合、利用者が製品を選ぶ決め手はOSそのものよりも、その上で動くアプリケーションやサービス、使い勝手にある。森田氏は「クルマも同様に、OSや基盤ソフトウェアではなく、その上の機能や体験で競争すべきだ」と説く。

 この考え方を形にしたのが「オープンコア」である。OSや基盤ミドルウェアは業界共通とし、差別化はその上のアプリ層やユーザー体験で図る。「ボッシュはこのモデルを自動車業界にも持ち込もうとしている」(森田氏)という(図2)。

図2:オープンコアによる協調と関連団体(右)

 その実践の場が、オープンソース推進団体のEclipse Foundationが運営するプロジェクト「Eclipse S-CORE」だ。ADAS領域を主な対象とし、機能安全規格の安全要求レベルである「ASIL B」までの対応を見据えたオープンソース標準として2024年第4四半期に始動した。ボッシュは、グループで車載ソフトウェアを手掛ける独ETASを通じて立ち上げに関わり、コード開発を続けている。

 その成果として、約1年でコードの貢献量は約100万行に達した。ロードマップでは、2026年12月に量産開発対応の「v1.0」を、2028年に2030年のSOP(Start of Production:量産開始)に対応する「v2.0」を、それぞれリリース予定である。

 欧州の活動を業界横断で支えるのが、ドイツ自動車工業会(VDA)が呼び掛けたオープンソースソフトウェアの活用に関するMoU(Memorandum of Understanding:覚書)への参加だ(図3)。この枠組みは現在Eclipse FoundationのS-COREプロジェクトを中心的な実装プロジェクトとして位置付けており、ボッシュのほか「独BMW、部品大手の独コンチネンタル、仏ヴァレオなどが署名している」(森田氏)

図3:ドイツ自動車工業会(VDA)発のMoUはEclipse Foundationのプロジェクトとして推進され、新たに21社が加わった

 さらに、2026年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級の技術展示会「CES 2026」では米アクセンチュアのほか、半導体大手の独Infineon Technologiesや米Qualcomm、電機大手の韓LG Electronicsなど21社が第2弾の参加企業として加わった。署名企業は拡大を続け「いまや欧州を中心に始まった取り組みはグローバルな広がりを見せている」と森田氏は説明する。

風向きが変わった日本に欧州も注目

 オープンコアを体現する事例が、ETASと同業である独Elektrobitの協業だ。両社は2026年5月27日に専門展示会「人とくるまのテクノロジー展」で、Eclipse S-COREベースの共通ソフトウェア基盤「Vehicle Software Platform Suite」(ETAS製)と、安全用途向けLinux OS「EB corbos Linux for Safety Applications」(Elektrobit製)を統合したADAS向けプラットフォームを発表した。

 同様の動きは日本にも及んでいる。車載ソフトウェアの標準化を担うJASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)は、車両データ標準の策定を進めるCOVESA(Connected Vehicle Systems Alliance)と連携し、車両API(Application Programming Interface)のオープンソースプロジェクト「Yoriito(ヨリイト)」を公開した。

 Yoriitoは、COVESAのVSS(Vehicle Signal Specification:車両信号の仕様)/VISS(Vehicle Information Service Specification:車両データへのアクセス仕様)を用い、標準化した方法で車両データにアクセスするための実装である。森田氏はこれを「日本の自動車業界として初めて」の取り組みだと強調した。COVESAは、欧州自動車工業会(ACEA)ともMoUを締結しており、「オープンな協業の輪は着実に広がっている」(同)状況だ。

 こうした連携の中で「欧州の関心が日本の開発力や取り組みに向かっている」と森田氏は分析する。その反応は「数年前と今では全く違う」(同)ほどだ。欧州で開発が進む中で「日本がSDVにどう取り組むのかをすごく気にしている」(同)

 変化を象徴するのが、2025年12月11日にボッシュ日本法人本社(横浜市)を会場とした、日本初のEclipse SDV Communityのミートアップだ。対面とオンラインを合わせて120人が参加し、EU(欧州連合)圏外では最大規模となった。

 ミートアップには、OEMやサプライヤー、ソフトウェア企業、大学などの関係者が一堂に会した。さらに2026年9月、幕張メッセで日本初のCOVESAイベントを開き、COVESAの関係者が講演する「SDVフォーラム」やCOVESAの展示パビリオン、SDVに関するレセプションパーティーなどを展開する。

 講演の最後に森田氏は「日本には高い開発力がある。SDVへの取り組みを個社にとどまらず、一緒にグローバルに発信していこう」と呼び掛けた。