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  • 日系SDVが世界で勝つための協調と独自性

独ボッシュ、SDVの協調開発に向けたオープンソース基盤を広める

「SDVサミット2026」より、日本法人 技術戦略・エンジニアリング統括の森田 泰弘 氏

トップスタジオ
2026年10月19日

自動車システムサプライヤー大手の独ボッシュは、ソフトウェアで車の挙動や運転支援機能を変えるSDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア定義車両)の技術開発を進める一方、OSなどの基盤ソフトウェアを業界全体で共通化する活動を推進している。同社日本法人 技術戦略・エンジニアリング統括の森田 泰弘 氏が「ソフトウェア・ディファインド・ビークル・サミット2026」(主催:インプレス、共催:Open SDV Initiative、2026年6月11日)に登壇し、具体的なユースケースと協調開発の現状について話した。

 「SDV(Software Defined Vehicle)開発の加速に当たっては、競合であろうが何であろうが、一緒にやらなければならない」--。独ボッシュ日本法人 技術戦略・エンジニアリング統括の森田 泰弘 氏はこう話す(写真1)。グローバル大手のTier 1である同社は、自らの機能開発を進めつつ、基盤ソフトウェアを競合とも共同で開発する取り組みに力を入れている。

写真1:独ボッシュ日本法人 技術戦略・エンジニアリング統括の森田 泰弘 氏

ソフトウェアの更新で「走る・曲がる・止まる」が変わる

 クルマの基本性能はかつて、機械工学を中心としたハードウェア設計で決まってきた。ソフトウェアはハードウェアに付随し、性能の微調整を担うに過ぎなかった。

 現在は、運転支援用カメラや各種センサーの情報処理から運転スタイルのパーソナライズまで、ソフトウェアなしに新しいユーザー体験は成り立たない。森田氏は「ソフトウェアを変えるだけで『走る・曲がる・止まる』という基本的な動きまで変えられる。これはハードウェアでは全く成し遂げられなかった世界だ」と話す。

 その代表例が、ビークルモーションマネジメント(VMM:Vehicle Motion Management)である。ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、アクティブサスペンションを1つのソフトウェア層で横断的に制御し、ドライバーの運転スタイルや乗員の状況に合わせて車の挙動をリアルタイムに変える(図1)。

図1:ビークルモーションマネジメント(VMM)はソフトウェアで運転体験を高める

 カメラとAI(人工知能)技術で乗員の状態を認識し、軽快な走りを好むドライバーには「スポーツモード」を、子どもが同乗しているなら穏やかにブレーキを効かせる「コンフォートモード」を、ストップ&ゴーの多い都市部の取り回しなら「アーバンモード」を、といった具合に最適な制御モードを自動で提案・適用する。

 ビークルモーションマネジメントの用途は運転のパーソナライズにとどまらない。狭い場所での小回りを支援する「イージーターンアシスト」、高速コーナリング時の「仮想差分(デフ)ロック」、駐車時間を短縮する「ワンムーブパーキング」など機能は多岐にわたる。いずれも「ソフトウェアの更新で追加・改善する仕組みで、クルマの機能を継続的に進化させる」(森田氏)

日本の道路事情に合ったAIモデルを実走で開発

 SDVならではの機能のもう1つの例が、センサー入力から走行計画までを一貫して処理するE2E-AI(End-to-End AI)ベースのADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)だ。ボッシュはAIモジュールとして(1)認識、(2)センサー情報の統合(フュージョン)、(3)予測・計画の3つを用意し、自社の安全性担保技術を組み合わせて提供している。

 ADAS展開の起点は中国だ。L2++(レベル2を拡張した高度な運転支援)の分野で市場をリードしており、先行して学習データと市場導入の知見を蓄積している。そこで得たAIスタックをベースに、各地域へ迅速に展開する流れだ。すでにOEM(完成車メーカー)大手Chery(奇瑞汽車)向けの案件が進み「欧州では独フォルクスワーゲン(Volkswagen)との共同プロジェクトによるソフトウェアスタックを2027年に市場投入予定」(森田氏)である。

 一方、日本の道路環境への適用には固有の難しさがある。入り組んだ路地に自転車や歩行者が混在し、スムーズに「走り出す・止まる・避ける」という基本動作に精度が問われる。そこでボッシュのエンジニアは「日本の道路を実際に走行し、そのデータをAIモデルの学習に生かしている」と森田氏は説明する。

 ハードウェアとソフトウェアを分離した構成のため、AIモデルは車両側の基盤を大きく変えず、地域ごとの道路環境に合わせて更新可能である。森田氏は「この点にSDVのスケーラビリティの強みがある」と強調する。