- Column
- 顧客の声が導く次なるCXのシナリオ
VoCを学びに成長し続けるAIコンタクトセンターが一段上のCXを導く
「CX Day 2026」より、RightTouch 代表取締役 CCOの野村 修平 氏
- 提供:
- RightTouch
VoC活用は最終ゴールから逆算したロードマップの設計が必要
今後のVoC活用において、野村氏は「(1)パーソナライズ、(2)アセスメントによる中長期プラン策定、(3)応対品質評価、の3つのポイントが重要」と語る。
ポイント1:パーソナライズ
AIオペレーターに人間の温かみや機転を持たせ、CX(Customer Experience:顧客体験)の低下を防ぐためのアプローチとなる。具体的には、過去のVoCをAI技術で分析して顧客の属性情報を事前に付与し、顧客それぞれの状況に応じて柔軟に分岐対応できるようにする。
例えば「『現在の契約情報を知りたい』という同一の問い合わせであっても、マイページへのログイン方法をSMS(Short Message Service)で案内し、自己解決へとスムーズに誘導するといった方法が有効」と野村氏は説明する。
過去のVoCから、サービスへの不満や解約の予兆が検知される顧客に対しては対応を変える。解約リスクが高いと判定した場合には、有人のオペレーターへ優先的にエスカレーションする分岐対応をとる。野村氏は「解約リスクを含む注意事項をオペレーターへ引き継ぐ連携方法は、人とAI技術の役割を最適に分担した形だ」と説明する。
ポイント2:アセスメントによる中長期プランの策定
全入電の一次応対にAI技術を適用する最終ゴールから逆算し、自社の現状と課題を評価(アセスメント)した上で、段階的な検証ロードマップを敷くアプローチとなる。ここでは多くの企業が陥りがちな「逐次最適型」の落とし穴を回避する(図2)。
野村氏は「全体のグランドデザインを描かないまま、ログインや資料請求といった『着手しやすい領域』から行き当たりばったりのPoC(Proof of Concept:概念実証)を始めると、部分最適の罠にはまる」と懸念する。その結果「先々でナレッジの拡充などの課題に直面した段階で、取り組み自体が停滞を余儀なくされる」(同)からだ。
中長期的なロードマップ設計を進める際、野村氏が有効とするのが「問い合わせを『種別(照会/手続き)』と『複雑さ(定型:Webでできる/非定型:電話でしかできない)』の2軸で類型化するマトリクス分析」だ(図3)。
AI技術の導入の順序には「明確な鉄則がある」と野村氏は強調する。まずは最もハードルの低い「A:照会・定型領域」から着手する。次に、ナレッジの追加整備が必要となる「B:照会・非定型領域」に進む。そして、CRMや基幹システムとの連携が求められる「C:手続き・定型領域」へと段階を上げる。
マトリクス分析と並行して「どの応対に、最もコストや時間の削減におけるポテンシャルが眠っているのかを見極めるのが肝要」(野村氏)とする。具体的には、リーズン別の件数と、1件当たりのAHT(Average Handling Time:平均処理時間)の分布を掛け合わせて、効果が最大化する領域を事前に算出する。
野村氏は「最初のステップで確実に数字上のインパクトを出し、組織内での成功体験を段階的に積み重ねていくことが、生成AIプロジェクトを軌道に乗せる最大の鍵となる」と強調する。
ポイント3:応対品質評価
顧客対応を自動で評価・分析し、有人オペレーターだけでなくAIオペレーター自身を成長させていくアプローチとなる。従来、担当者がサンプリングした音声データを1件ずつ確認していた評価を、自社が定めた評価項目と基準に沿って、全量の応対を自動評価する環境を構築する。
この評価のフィードバックをAIオペレーター自身に適用することで、不足しているナレッジの自動生成や、プロンプト(指示文)の自動修正といった自己改善を自律的に走らせる。さらに「有人オペレーター自身の高品質な応対ログをAIオペレーターが繰り返し学習すれば、自律的な自己進化のサイクルが確立できる」と野村氏は説明する。
AI化の最適なスタートラインは企業ごとに異なる
始まったばかりのAIコンタクトセンターの構築に向けては「AIオペレーターから始めたい」という要望も多い。一方で「社内ナレッジの統合管理や自己解決率の向上など、企業が抱える課題によって最初に手を付けるべき場所は異なる」と野村氏は分析する。
講演の最後に野村氏は「最初の一歩をどう踏み出すかは悩むところが大きい。プロジェクトの全容が固まっていなかったとしても、まずはカジュアルな情報交換から、その迷いを解消することにご一緒したい」と呼び掛けた。


