- Column
- 顧客の声が導く次なるCXのシナリオ
アフラック生命保険、VoCから顧客の「なぜ」を解き明かし顧客接点を再創造
「CX Day 2026」より、執行役員の松尾 栄一 氏
「何の件か」から「なぜ」に迫るVoC分析へとシフト
一方で、顧客との重要接点であるコンタクトセンターの改革も、段階を追って進んできた。当初はオペレーターが対応内容を手入力して記録し、分析も人手で担っていた。そこに音声認識によるテキスト化の仕組みを導入し「さらにAI技術による要約とインテント(意図)分析を組み合わせたことで、分析速度は段違いに向上した」と松尾氏は説明する(図3)。
しかし、突き当たった壁もある。「要約だけでは顧客の真因を正しく捉え切れないケースが多かった」(松尾氏)ことだ。要約は、個々の通話を短くまとめるには有効だが「なぜその問い合わせが発生したのかという構造的な原因までは浮かび上がってこない」(同)ためだ。
そこでアフラックが次に着手したのが「何の件で電話してきたのか」だけでなく「なぜ電話してきたのか」という真因分析への対応だ。AIエージェントを使い、要約を経由せずに通話の原文データを直接分析する。個々の問い合わせをインシデントとしてデータ化し、苦情管理データベースに蓄積されたデータと横断的に突き合わせることで、特定の商品・手続き・チャネルに共通する根本原因を洗い出す狙いだ。
その実現に向けては「四半期1万件超の声をAI技術が分類・分析し、ダッシュボードで可視化された結果を経営レベルのPDCAに直結させる一気通貫の仕組み」(松尾氏)を目指す。現在は「マニュアルやノウハウDBなどを“AI Ready”な状態に整えるための準備を進めている最中」(同)とする。
AXを支えるクラウド基盤が次の顧客接点を生み出す
アフラックのAX戦略を下支えするのが、ITインフラの刷新だ。同社では(1)クラウドの積極活用、(2)自動化によるセルフサービス化、(3)レジリエンシー(回復力)なシステム構造への移行、の3つを柱に据えて改革を進めてきた。例えばセルフサービス化により「従来は2~3日を要したインフラのオーダー処理が数十分で完了する事例が生まれ、ヒューマンエラーの減少にもつながっている」(松尾氏)という。
クラウド移行については「2027年末までにホスト(メインフレーム)を除く全オープン系システムのフルクラウド化を完了させる計画で、現在は予定通りに進行中だ」と松尾氏は説明する。
そのために、米AWS(Amazon Web Service)をプリファードパートナーとし、中核サービス「Bedrock Agent Core」を基盤としたAIエージェント基盤を構築中だ(図3)。「使いたいエージェントを使いたいときに載せられるよう、インフラが足かせにならないことが重要だ」(松尾氏)と、柔軟性を重視した設計思想に基づいている。
顧客接点では、ボイスボットによる要件確認や本人確認の自動化がすでに稼働しており「60歳以上の利用者の約7割がポジティブな評価を示している」と松尾氏は手応えを示す。
今後は、アフラックAIサポートコンシェルジュの対応範囲を広げ、電話とWebの両チャネルからシームレスに顧客対応可能な体制を目指す。その中では人間に近い表情を持つデジタルヒューマンアバターの質を引き上げて「無機質な音声だけでなく、顧客が相談しやすいUI(User Interface)/UX(User Experience)を実現したい」と松尾氏は展望する。
講演の結びに松尾氏は「VoCの可視化・分析を通じて、顧客体験と経営の意思決定の双方を向上させる『好循環サイクル』の実現を目指す」と意気込む。「取り組みは一社単独では難しい。皆さんと協業・共創できれば、より良いものができる」と呼びかけた。

