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  • 実測データとAI技術で高めるデジタルツインの価値

清水建設、建設現場で見えたフィジカルAIの壁を産業共通の基盤づくりにつなげる

「インダストリアルデジタルツインサミット2026」より、技術研究所 ロボティクス研究センターの五十嵐 俊介 氏

トップスタジオ
2026年8月21日

 これらの課題解決に向けて、産業界の有志企業が対話を通じて科学技術・イノベーション政策を提言し、その実現を図る団体「COCN(Council on Competitiveness-Nippon:産業競争力懇談会)」の取り組みがある。五十嵐氏は2024年から2025年にかけて、推進テーマである「フィジカル空間融合技術」のWGリーダーを務め、ルール・基準の産業共通基盤化、研究・実証環境の整備、そのための資金という三本柱を政策提言にまとめた。

 この提言を受けて2026年度に発足した組織が、五十嵐氏がリーダーを務める「フィジカルAIタスクフォース」である(図2)。領域は、以下3つとなり、現在30社・2大学・4団体の83者が参加する。

図2:「COCN(産業競争力懇談会)」の「フィジカルAIタスクフォース」の組織体制と参加メンバー

領域A=産業共通基盤 :安全・データ・導入評価の基準や標準を整備する
領域B=実証・エコシステム :取り組みをPoC(Proof of Concept:概念実証)で終わらせないため、実証環境の構築や業界別のプロトタイピングを進める
領域C=政策・プロジェクト化 :政策や国家プロジェクトへの接続を図る

 このうち領域Aの3テーマは、清水建設が現場で突き当たった主要な壁と、うまく対応する。

 課題1=安全に対応するテーマは、日立製作所がリードするA1「安全・責任分界原則」である。安全なAI技術をどう作るかという技術論に留まらず「誰が何を見て、どこで止め、誰が最終的な責任を負うのか」を、実運用上の共通ルールとして定めることを目標に掲げる。AI技術が抱える不確実性や、マルチベンダーで曖昧になる責任の境界、ルール不在ゆえのPoC止まりなどに対して共通ルールを検討する。

 課題2=データに対応するテーマは、富士通がリードするA2「データ設計ガイド」である。「使えないデータが大量に出ても意味がない」(五十嵐氏)との認識の下、データの持ち方・残し方・直し方の三原則を検討する。どこまで共有できるのか、どう変換すれば共有できるのか、あるいはモデル自体を共有するのかを検証する。企業ごとの競争領域を残しながら、産業界で共通化できる範囲を見極める。

 課題3=ROIに対応するテーマが、トヨタ自動車がリードするA3「導入評価・判断構造ガイド」である。いかなる状況下でどう導入すれば効果が出るのか、人とAI技術の役割分担をどう設計すべきかを判断する共通評価フレームワークを構築する。

共通原則を策定し2027年の国家プロジェクト化へ

 活動の現在地を五十嵐氏は「政策提言から政策支援へ、実際に手を動かす領域に入っていきたい」と意気込む。2026年上期に共通原則を策定し、下期に実証設計とプロトタイピングを進める。「2027年度には大型の国家プロジェクトへの接続を目指す」(同)という(図3)。

図3:フィジカルAIタスクフォースのロードマップ

 対象とするフィジカルAIの適用範囲は人型ロボットに限定しない。自律的に動作し適応制御を施すロボット・機械・設備と、その運用環境を含むシステム全体を「フィジカルAIシステム」と定義する。建設業から出発した議論が、製造・医療・介護といった各分野に共通する課題へと開かれていく構想だ。講演の締めくくりに五十嵐氏は「ぜひ皆さんにも参加いただけるとありがたい」と呼び掛けた。