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  • 実測データとAI技術で高めるデジタルツインの価値

清水建設、建設現場で見えたフィジカルAIの壁を産業共通の基盤づくりにつなげる

「インダストリアルデジタルツインサミット2026」より、技術研究所 ロボティクス研究センターの五十嵐 俊介 氏

トップスタジオ
2026年8月21日

人型ロボット(ヒューマノイド)を建設現場で動かし、技能作業の学習に取り組む中で見えてきたのは、安全・データ・ROI(Return on Investment、投資対効果)という自社だけでは越えにくい壁だったという。清水建設 技術研究所 ロボティクス研究センター フィジカルインテリジェンスグループ グループ長の五十嵐 俊介 氏が「インダストリアルデジタルツインサミット2026」(主催:同プログラム委員会/サイバー・フィジカル・エンジニアリング技術研究組合、2026年7月8日)に登壇し、フィジカルAI(人工知能)の現場実証の成果と、COCN(Council on Competitiveness-Nippon:産業競争力懇談会)内でリーダーを務める産業横断の共通基盤づくりの活動を紹介した。

 「優れた人型ロボット(ヒューマノイド)を1社が開発するだけでは、フィジカルAI(人工知能)は社会に実装されない。性能を競い合う前に、安全、データ、ROI(Return on Investment、投資対効果)という領域を、産業界全体で手を組み、整えられるかが焦点になる」--。清水建設 技術研究所 ロボティクス研究センター フィジカルインテリジェンスグループ グループ長の五十嵐 俊介 氏は、こう強調する(写真1)。

写真1:清水建設 技術研究所 ロボティクス研究センター フィジカルインテリジェンスグループ グループ長の五十嵐 俊介 氏

建設現場の人的限界が事業継続を脅かす

 人型ロボットの前提となる数字は重い。建設業の就業者は55歳以上が約37%を占める一方、10代と20代は約12%に留まり、高齢化と若手不足は全産業と比べて一段と深刻だ。

 就業者数自体も長期的に減少している。有効求人倍率は、建設関連職種で全職業平均の約7倍に達し、労働災害による死亡者数は製造業のおよそ2倍に上る。五十嵐氏は「省人化・自動化はもはや効率化の話ではなく、事業継続に関わる経営課題」だと指摘する。

 しかし、建設業では「製造業の自動化手法がそのまま通じない」(五十嵐氏)という事情がある。工場のラインに製品を流す製造業と異なり「現地に建てるため、人がそこに集まる必要があり、機材も材料も全てを現地に持っていく」(同)からだ。

 土地も施工条件も毎回変わり、現場ごとに専門工事会社と契約を結ぶため従事者も入れ替わる。五十嵐氏は「固定設備を設置して自動化する発想が成立しにくい、労働集約型のものづくり」だと説明する。

人間仕様の建設現場だからこそ人型ロボットの二足歩行が生きる

 清水建設は、1980年代から施工ロボットの開発に着手し「2000年頃にも人型ロボットに挑んだことがある」(五十嵐氏)という。だが、従来型ロボットの限界は「事前プログラムに基づく定型作業しかできず、移動機構を載せれば機体が大型化する」と行き塞がった。「天井を施工するロボットを作ったら天井しかできない」ように、職人が持つ技能をプログラムで書き尽くすことの難しさが壁になってきた。

 その状況を変えつつあるのが、フィジカルAI搭載のロボットだ。従来型と異なり、周囲の状況を認識して柔軟に適応動作し、種々の作業への応用が見込める。

 中でも、人型ロボットは専有面積が小さく、高い移動の自由度を確保できる。職人の技能に関しても「人が手本となる動作を見せ、そのデータを学習させてモデル化を可能にする」(五十嵐氏)

 さらに建設現場は人型と相性が良い。五十嵐氏は「現場環境や作業工具は人間中心の仕様で整っているため、大規模な改修なしに既存のインフラを生かせる」と説明する。車輪型や軌道型ロボットの進入が困難な階段、はしご、足場といった場所も、二足歩行なら移動できる。

 機械化が遅れているという建設業の「不利」すら、既存設備との調整が比較的少ない分、ここでは「有利」に反転する。五十嵐氏は「逆に真っさらな環境だからこそ、技術の導入に適した面がある」と参入への優位性を強調した。