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進化し続けるIoTプラットフォームの提供にこだわる、ソラコムの玉川 憲 社長

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年8月22日

−−ソラコム自身は2016年からグローバル展開を始めている。PoC以外にも日本市場との違いはあるか。

 グローバル展開は現在、米国市場重視で取り組んでいる。ソラコムが提供するIoTプラットフォームサービスに対する要求自体には、日米で違いはない。最も大きな違いは、米国にはソフトウェア開発者を対象にした各種ツール、すなわち「GitHub」や「Atrassian」「Sluck」「PubNub」などの市場が存在していることだ。それだけ開発者の存在感が強い。

 当社から見れば、開発者が利用しやすい環境が必要なことや、彼らとのパートナーシップを上手く構築しなければならないということになる。こうした取り組みは、AWS(Amazon Web Services)などメガクラウドベンダーが採っている開発者へのアプローチそのものだ。そのため当社でも、開発者に対する取り組みを重視するようしている。

 開発者重視の傾向は日本でも広がるとみており、米国市場だけでなく、日本でも同様に進めている。クラウド以後、システム開発の常識は崩れているからだ。具体的には、データセンターを保有していなくても開発・運用の能力があれば、システム構築のプライムコントラクターになれるし、IoTのアプリケーションも構築できる。よりアジャイル(俊敏)なサービス展開が求められるほど開発者の重要性も高まっていく。

−−最近はITサービス事業者やユーザー企業までもがIoTプラットフォームサービスに乗り出している。半導体メーカーなどもIoTプラットフォーム市場に進出し、英Armなどはビッグデータ分析のトレジャーデータを買収もした。ソラコムとしては今後、どんな方向を目指すのか。

 IoTプラットフォーム市場に多くのプレーヤーが参入しビジネスが拡大することは、当社にとっても良いことだ。

 当社はIoTデバイス用のデータ通信SIM「SORACOM Air」の提供からスタートした。だがSIMを提供するだけでも、関連するクラウドサービスを提供するだけではない。当社は、これらを組み合わせたIoTプラットフォームを提供する“プラットフォーマー”である。誰もが容易に利用できIoTサービスを構築できる環境を提供する。

 そのために、ソラコムとしてやるべきことをやる。それがビッグデータ分析であれば取り組むだろうが、今はその必要性は感じない。製造業向け、小売業向けといった業種特化も考えていない。

最大のリスクは進化を止め速度を緩めること

 ソラコムにとって最大のリスクは、進化を止めることと、進化の速度を緩めることだ。当社のサービスは、SORACOM Airの「A」に始まりアルファベット順に増やしてきた。2018年7月には、SIM認証によるクラウド連携の可能にする「SORACOM Krypton」と、IoTデータのダッシュボードを作成する「SORACOM Lagoon」を投入し、「L」まできている。

 次は「M」を冠したサービスになるだろうが、この間、常に目指してきたのは「ワイヤレスアグノスティック」「クライアントアグノスティック」、つまり無線通信方式やクライアント環境を問わないということだ。今後は、これらに「コネクティビティアグノスティック」を加え、複数のクラウド環境など接続先を問わないIoTプラットフォームを提供していく。

−−サービス拡張には、ソラコム自身も優秀な開発者を抱える必要がある。開発者の獲得競争も激しくなっている。

 最近、人材獲得に向けた「ジョブディスクリプション(募集概要)」をWebサイトの採用欄に公開し始めたところだ。まずは運用系技術者とバックエンド系技術者などを募っている。

 幸いにも当社でIoTプラットフォームの開発に取り組みたいという人材が集まってくれており、人材面で困っているということはない。