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GAFAも進出する「ドックランド」で進むダブリンのスマートシティ計画、ソフトバンクも参加

アイルランド政府産業開発庁 ICT部門代表 レオ・クランシー氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年10月10日
写真1:アイルランド・ダブリンの中でもデジタル関連企業が集まる「ドックランド地区」の風景。ドックの倉庫群がオフィスに転用されている

アイルランドの首都ダブリン。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)も開発拠点を構える「ドックランド」において、スマートシティ関連プロジェクトが進められている。米マイクロソフトや米IBMが参画するほか、ソフトバンクも2018年6月、参画を発表した。なぜダブリンなのか。アイルランド政府産業開発庁(IDA Ireland) のICT部門代表を務めるレオ・クランシー氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏 = DIGITAL X編集長)

――スマートシティの開発プロジェクトに注力している。

 2015年過ぎからアイルランド政府やダブリン市議会などが連携し、体系的な取り組みを進めている。スマートシティのプラットフォームになる「Platform for Innovation」を提供し、その上で各種アプリケーションの実証や実現に、大学や研究機関、そして企業とともに取り組む形を採っている。

写真2:アイルランド政府産業開発庁(IDA Ireland) のICT部門代表を務めるレオ・クランシー氏

 プラットフォームは、通信とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の研究拠点「CONNECT」が中心になり、英Vodafoneと共に最新テクノロジーを取り込みながら構築・運用している。最近では、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークも構築し「LoRa」や「Sigfox」のサービスも提供し始めた。

 アイルランドがスマートシティに取り組み始めたのは2010年前後だが、当時はアプリケーション別にプロジェクトを立ち上げていたため、連携性に欠けていた。その反省からプラットフォームを重視する形になっている。

かつての港湾倉庫街がGAFAも進出する先端拠点に

 現在のプロジェクトはダブリン市が持つプロジェクトマネジメント組織が管理し進めている。「ドックランド」と呼ぶエリアを中心に、種々のプログラムを走らせている。ドックランドは、かつての港湾地区にあった倉庫群をオフィスに改修して利用している地区だ。アイルランドにはGAFA(Google、Apple。Facebook、Amazon)4社が進出しているが、うちGoogle、Facebook、Amazonがドックランドに拠点を構えている。

 2018年6月、ソフトバンクもダブリンのスマートシティプログラムへの参加を決めた。同社は、自社で持つIoT プラットフォームを試験的に導入し、産業界や大学、スタートアップ企業などとともに、都市の課題解決に取り組むことになる。

 進行中のアプリケーションとしては、都市の交通渋滞の解消、洪水対策などがある。洪水対策には、米IBMが2017年から参画している。またスタートアップ企業との連携強化に向けたプログラムとして、「スマートバイシクル」も展開している。都市部での自転車利用をうながすプログラムで、10万ユーロ(約1300万円)を拠出する。

 2018年9月からはFintech分野の研究開発プロジェクト「FinTech Fusion」も立ち上げた。2022年までに500万ユーロ(約6億5000万円)を投資する。ブロックチェーンやオンライン決済、規制技術(RegTech)などに焦点を当て、欧州最大のFintechハブの1つになることを目指す。