• Interview
  • サービス

進化し続けるIoTプラットフォームの提供にこだわる、ソラコムの玉川 憲 社長

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年8月22日

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)への取り組みが進む中、エッジデバイスの接続サービスなどで存在感を示すのがソラコムだ。IoTに特化したMVNO(仮想移動体通信事業)としても、ソフトウェア技術により通信業界の常識に挑む日本発のベンチャー企業としても、業界内外からの期待を集める。2015年9月のサービス開始から約3年が経った今、ソラコムはIoTに対し何を考えているのか。創業者で代表取締役社長である玉川 憲氏に聞いた(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長)

−−2015年9月のサービス開始から約3年が経ち、この間にIoTへの期待度なども大きく変わってきた。これまでをどう振り返えるか。

 当社の顧客数はすでに1万を超えている。その規模や業種、利用方法はさまざまだ。たとえば、ソースネクストの小型翻訳機「POCKETALK」のようなハードウェアメーカーや、フジテックのエレベーターのグローバルでの遠隔監視のようにIT部門が牽引するプロジェクトなど、多種多様な顧客層に利用いただいていることをとても喜んでいる。

ソラコムの玉川 憲 社長

 ただ3年弱でここまで成長できたことは当初予想を上回っている。その背景には、クラウドコンピューティングの台頭以後、日本企業のテクノロジーへの取り組み姿勢が大きく変わってきたことがあるだろう。オープンイノベーション(共創)への取り組みや、各社が積極的にテクノロジーの利用について情報発信するようになったことなどが、その表れだ。

 タイミング的にも恵まれた。サービス開始当時は、IoTの注目度も現在ほど高くはなく、「IoTならソラコム」として認知された。2017年8月にKDDI傘下に入ったことは、当社サービスの継続性への信頼感につながった。IoTのための通信インフラは、本採用になれば5年、10年と利用される。それだけに従来は「ソラコムというベンチャー企業のサスティナビリティは大丈夫なのか」といった観点から検討期間が長引くこともあった。

−−一方で、「IoTはPoC(概念検証)で終わるケースが多い」という声も未だに強い。ソラコムが携わる案件では、どうか。

 確かに米国ではトップダウンで本番までやり切るケースが多く、それに比べれば日本はPoCで終わる率が高い。中にはPoCにまで至らないケースもある。ただ日本企業でも経営トップが「IoTをやるな」ということはない。むしろ「やれやれ」と発破をかけていることが多い。ただ、そのことが逆に、手段と目的の取り違えにつながっている面も否めない。

 米国の例でいえば、PoCの前に新規事業を生み出すための仕組みが検討されており、PoCはその事業を検証する場になっている。IoTというテクノロジーを検証しているわけではない。ここに米国と日本の違いがある。

76世代としてデジタル化を牽引する責任がある

 しかし今や、テクノロジーの変化が速いことに加え、ビジネスの変化も速くなってきている。オンラインビジネスの重要性も高まっている。今後は、IoTやAI(人工知能)なども、それを利用することが当たり前になってくる。日本企業の取り組みも、この3年間以上に大きく変わってくるはずだ。

 その意味では、私自身を含め「76(ナナロク)世代」と呼ばれる30〜40代の世代には、デジタルテクノロジーの活用において、もっと頑張らないといけないのだろう。76世代とは、1976年前後に生まれた人たちで、大学時代にインターネットの普及期を迎えた人たちのことだ。それ以前のリアルな世代と、それ以後のデジタルな世代の中間に位置することから、双方の特徴が分かり、それぞれのビジネスを展開できる。

 今はデジタルによって、旧来のリアルのしがらみを断ち切ろうとする時代。だからこそ、双方を理解できる30〜40代には時代を切り拓く責任があるといえる。