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BIは単なる可視化ではない、技術より先に組織を考えよ

マイクロストラテジー・ジャパンの印藤 公洋プレジデント

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年11月20日

米MicroStrategyは、1989年創業のBI(ビジネス・インテリジェンス)ソフトウェアの老舗である。創業者のMichael J.Saylor氏が現在もCEOを務めるとともに、創業以来一度も他社を買収したことがないIT企業としては異色な存在だといえる。同社日本法人の印藤 公洋プレジデントに、昨今のセルフサービスBIブームに対する見解を聞いた。(聞き手は指田 昌夫=フリーランス ライター)。

――BI(ビジネス・インテリジェンス)に対する企業の関心が非常に高くなっている。ただ、データを可視化する機能の高度化に集中しすぎており「ビジネスの現場で本当に役に立つのか」という疑問の声が出てきている。

 表面的にデータを可視化するだけでは“真のBI”とは呼べません。最近は「セルフサービスBI」が話題だが、これを「だれもがデータを自由自在にグラフ化できる」ということだと考えれば、企業組織全体が成果を得るのは難しいでしょう。従来からのExcelの使い方と大きく変わらないとしか言えません。

写真:米MicroStrategy日本法人の印藤 公洋プレジデント

 BIで重要なことは、企業内の共通基盤として分析結果の共有です。たとえば当社の顧客であるヤフー・ジャパンでは、全社でデータの定義をそろえた基盤を整え、そのうえで分析した結果を共有する仕組みを作り上げています。

 同社は、コマース事業「Yahoo!ショッピング」といった各種サービスの利用者の閲覧ログや購入のトランザクションなどすべてを巨大なデータプラットフォームで一元管理しています。その膨大なデータを800人を超えるデータ分析者がデータを日々分析していますが、800人が各自バラバラの軸でデータを分析しても、共通の議論ができないからです。

ダッシュボードを作る人でなく活用する人の目線で考える

 企業の方のBIの導入について話すと、「こうしたダッシュボードは作れますか?」という質問をよく受けます。ですが、その要望に応えるだけでは、ダッシュボードを作る人の要望に応えるだけになります。

 私たちが目指しているのは、画面を作る人でなく、実際にその画面を見て働く人の役に立つ情報を提供することです。営業部門であれば、各営業部員のグラフィカルに管理するだけでなく、彼らの現場の行動を支援することが真のBIなのです。

――ただBIのインタフェースとしては可視化以外ないのでは。

 当社が最新版でリリースした「HyperIntelligence」は少し異なります。HyperIntelligenceはBIで得られる示唆をビジネスの現場で使われている、さまざまな環境からアクセスできるようにした製品です。

 たとえば営業部員が訪問先の企業情報を検索しなくても、予定表にある社名にカーソルを当てれば、企業情報がポップアップで表示されます(図1)。スマートフォンやモニターの画面に、蓄積してきた情報をタイムリーに表示したり、音声でアシストしたりも可能です。

図1:「HyperIntelligence」のポップアップ表示の例