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コンタクトセンターでの顧客との素早い情報共有が利益を生む

Genesys Cloud担当エグゼクティブ・バイスプレジデント オリヴィエ・ジューブ氏

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2019年12月12日

コンタクトセンターは“ブランドのアンバサダー”

 当社の製品コンセプトの1つに「ファースト・コンタクト・レゾリューション(FCR:First Contact Resolution)」があります。顧客からの最初の問い合わせは、その場で解決するという考え方です。

 たとえば、日本のFX会社である外為どっとコムは、当社のクラウド型コンタクトセンター「PureCloud」を導入し、100%のFCRを実現しています。100%の実現は、なかなかないことです。その成果と連動する形で、応答時間は平均10%削減、応答数は6%増と業務の効率化を図っています。

 最近のコンタクトセンターは、サービス領域だけでなく、マーケティング領域でも重要な役割を担っています。製品検討段階での問い合わせに対し、適切な応対をすることで製品購入率を35%改善した事例もあります。

 さらに、購入後のアップセル/クロスセルにも、オール・イン・ワンのコンタクトセンターは効果を発揮します。コンタクトセンターは、これまでのコストセンターから、利益を生み出す組織に変わってきているのです。

 人材領域での活用事例もあります。製造業に向けて人材を派遣するUTグループでは、紙の履歴書だけでなくスマートフォンのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、より多くのチャネルから応募を募っています。ですが面接のために書類選考する最終段階では逆に、電話で直接話すほうがよいという経験値を持っていました。この両方をオール・イン・ワンのシステムで実現することで、面接対象者を8%増やしています。

――先に「カスタマーエクスペリエンス(CX)」と同時に「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」が重要との指摘があった。どんな取り組みを実施しているか。

 顧客と情報をいかに素早く共有するかが重要だと考えますが、そのためにはオペレーターが操作にストレスを感じているようでは優れた応対はできません。

 今、力を入れているのは、AIによって従業員の働きやすさをより高める取り組みです。まず、コンタクトセンターの業務をAIによって分析して改善しています。顧客ごとに、過去の問い合わせ内容からオペレーターの画面に表示する内容を最適化したり「こういう回答がお薦めです」という形で応答をリアルタイムに支援したりを実現しています。

顧客とオペレータの相性をAIで判断

 また、最初にオペレーターにコールをつなぐ際に、過去の情報から顧客とオペレーターの“相性”を考慮し、最適な担当者とマッチングする機能もあります。相性といった指標は業績に直結するものではありませんが、続けることで顧客の信頼とロイヤリティが高まり、最終的には企業の業績向上にもつながっていくのではないでしょうか。

 コンタクトセンターは、オムニチャネル時代の企業の代表窓口であり“ブランドのアンバサダー”です。より戦略的に投資すべきでしょう。

――クラウド型であることのメリットは何か。

 当社のPureCloudは4年前に生まれました。アーキテクチャーを一新し、従来のオンプレミス型アプリケーションのベストプラクティスを盛り込みながら、音声やテキストなどのデータを統合し、統一したUIによる操作を実現しました。

 AWS(Amazon Web Services)のマイクロサービスとして開発されているのも特徴の1つです。各機能をAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)でつなぐオープンなシステムだということです。

 PureCloud自身、APIによって動作していますし、開発パートナー企業も、同じAPIで独自の機能を作れます。AWS上の共通データ基盤を使うことで、「Salesforce.com」や「Microsoft Dynamics」などのクラウドアプリケーションとのデータ連携も可能です。

 これらにより、PureCloudの導入期間は従来と比べ大幅に短縮されました。導入を決めた企業の87%が、契約後90日以内に稼働できています。