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サブスクリプションが顧客とのより継続的な関係構築を求める

米Zendeskの製品事業統括本部長エイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年12月23日

デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みで欠かせないのが顧客接点の拡大と強化。AI(人工知能)による自然言語処理の進展などもありコンタクトセンターの位置付けなども変化してきている。顧客接点は今後、どうあるべきた。ヘルプデスクやコンタクトセンター用などのアプリケーション/サービスを開発・提供する米Zendeskで製品事業統括本部長を務めるエイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長)

――「CS」はかつて「Customer Satisfaction(顧客満足度)」だったが最近は「Customer Success」とするのが一般化してきている。

 サブスクリプション(購読)型のビジネスモデルが登場してきたことが背景にある。SaaS(Software as a Service)や、シェアドエコノミー型の移動サービスや宅配といったサービスが増えるなかで、顧客と単にコンタクトするだけでなく、顧客が今、置かれている状況に入り込んだ対応が求められるようになってきた。一時的なCX(Customer Experience:顧客体験)を高めるのではなく、良好な関係をいかに継続して保てるかが問われている。

写真:米Zendesk製品事業統括本部長のエイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)

 そのため顧客対応窓口の代表例であるコンタクトセンターも、今では顧客にとっては入口の1つでしかない。Customer Successの実現には、顧客の行動を一連の流れとして、どれだけ理解できるかが重要になるからだ。

 その意味では、従来型のCRM(顧客関係管理)システムでは不十分な時代になっている。顧客を“点”でしか管理できないからだ。コンタクトセンターだけ、チャットだけも同じだ。Webサイト上での動向やリアルなイベントへの参加状況などを含め、顧客の“動き”全体をエンドツーエンドで把握できなければならない。

 当社はこれまで、ヘルプデスク用の「Zendesk Support」や、コンタクト線at-用の「同Talk」、FAQなどのナレッジベース構築のための「同Guide」、チャット機能を提供する「同Chat」などを提供してきた。

 そして、サブスクリプション時代のCRM基盤として「同Sunshine」を2018年11月から提供している。AWS(Amazon Web Services)上で動作し、各種API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して、さまざまな仕組みと連携したり独自のアプリケーションを構築したりできる。

 2019年10月には新機能「Sunshine Conversation」を追加した。LINEなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使った顧客とのやり取りを管理するための基盤を提供する。

 LINEや中国のWeChat(微信)など、メッセージングアプリケーションの高機能化は世界のトレンドだ。それらはすでに、単なるチャットとしてだけでなく、買い物や旅行の予約など顧客のライフスタイルのすべてに関わり始めている。“会話”が、ECやWebサービスに並ぶビジネスのチャネルになってきているのだ。

 「Zendesk Gather」という、顧客同士によるコミュニティフォーラムを運営するための製品の提供も開始した。顧客同士が質問し合ったり、「こんな使い方はどうか」といったことを議論し合ったりするための“場”の構築を可能にする。

 顧客の疑問に対し、ベンダー側が持っている情報だけで答えることは、すでに限界を迎えている。ベンダーが想定していない使い方が広まったりするのが良い例だ。そこではベンダーは適切な解を用意できない。顧客の声には“口コミ”という宣伝効果もあるが、それ以上に顧客自身の使用経験に基づく情報の価値が高まっている。

 Gatherには、フォーラムのモデレーターを顧客の中から選んで認定する機能や、モデレーターなどコミュニティーに貢献した顧客には無償サービスを提供するといった機能もある。