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サブスクリプションが顧客とのより継続的な関係構築を求める

米Zendeskの製品事業統括本部長エイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年12月23日

従業員満足度の向上にもCXの概念が必要に

 Customer Successの考え方を従業員満足度を高めるために利用使用とする動きもグローバルに広まってきている。ベビーブーマーが引退し、ミレニアル世代が社員の中心になって来る中で、彼らは、より消費者的な振る舞いをすることからCustomer SuccessやCXの考え方が社内システムにおいても重要になってきた。

――エンドツーエンドと言ってもネット対応が中心だ。リアル店舗などでの活用状況はどうか。

 リアル店舗の動きを把握する動きも、もちろん高まってきている。たとえば英国のShell Energyは、オンライン/オフラインを問わず、顧客の全記録を収集し、それに基づく顧客サービスを提供している。

 同社は、ガスや電気、ガソリンスタンドでの燃料の提供のほかに、ブロードバンドサービや、それを使ったスマートホームサービスも展開しており、利用しているサービスの組み合わせで燃料や通信料を割り引くなどの特典を提供している。

IoTデバイスがフィールドサポートを自動で依頼

 同じ英国の大手小売業のTESCOは、店舗にある冷凍庫からのセンサー情報をヘルプデスクシステムで直接受け取り、保守対応のチケットを発行する仕組みを構築している。いわゆるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)のシステムだ。

 IoTとヘルプデスクやコンタクトセンターなどの連携は今後、本格化していくだろう。各種デバイスを管理するにしても、それを誰が保有しているかを把握することが重要になるからだ。まずは高額な大型機械から始まっていく。

 そのため2019年6月にデータの可視化/分析クラウドを提供する米Domoと提携した。IoTデバイスのデータをDomoのクラウドで分析し、必要があればSunshineに通知してサポートチケットを自動で発行するといったことが容易になる。この仕組みにより、カスタマーサポートとフィールドサービスの連携が可能になる。

――複数チャネルの一元管理が重要なことは分かっていても、担当部門がチャネル別になっているなどでシステムの統合は、なかなか難しい。IoTなども対象になれば、なおさらだ。

 チャネルごとに組織があり、それぞれの組織が個別のシステムを持っており、サイロ化しているのは世界共通だ。レガシーな会社ほど、歴史的な経緯から、その傾向は強い。だからこそ多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。新しいCXを切り口に、サイロ化したチャネルやシステムを統合・集約しようとしている。

 指標になっているのは、米Amazon.comや米Uber Technologies、中国のAlibabaなどが提供しているCXだ。いずれも透明性が高く、応答性が速く、顧客満足度が高いのが共通点である。日本でも、タクシーの配車サービスを手がけるJapan Taxiが新たなCXの実現に取り組んでいる。

――そうしたDXの取り組みは誰がけん引役になっているか。

 「CDXO(Chief DX Officer:最高DX責任者)」などDXに責任を持つ役職者が牽引するケースが多い。SunShineを導入した当社顧客の例では、CCO(Chief Customer Officer:最高顧客責任者)とCDTO(Chief Digital Technology Officer:最高デジタル技術責任者)、そしてCIOの三者が協力して取り組んでいた。CCOは、CXに責任を持つ役員である。

 個人的な見解だが、CIO(Chief Information Office:最高情報責任者)はテクノロジーを使ってビジネスを現代化するのが主な役割だろう。新たなサービスを構築するDXには、CDXOなどが当たることになる。