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この国を変えるモデルになるようなDXを理解得られる顧客と共に進める

ペガジャパンの代表取締役社長 渡辺 宣彦 氏とアカウントエグゼクティブの宮川 裕樹 氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2020年12月17日

宮川 :カスタマーエンゲージメントに関連するUX(User Experience)の充実が、公共機関が採用する第2の理由になる。国民や事業者と行政の接点を徹底的に追求できる。

 3つ目の理由は、クラウド対応を含め、インフラを自由に選べることだ。中央省庁によっては、政府共通のプラットフォームに載せることが要件として決まっているケースもある。クラウドネイティブなソリューションでは、他のインフラに載せるのは難しい。Pegaであれば、オンプレミスも含めたインフラを選択できる。

――海外でも、基本的にはインテリジェントオートメーションの領域から導入し、それがデジタル化によって、電信申請などオンライン化が進むという流れなのか。

渡辺 :公共分野においては、そうした流れになる傾向が強い。まずは業務の効率化が先行する。

 審査業務などのシステムを職員が効率良く操作できるようになれば、その仕組みにWebからの申し込み画面や申請画窓口などを追加することで、オンライン対応が実現する。オンラインで受け付けた内容は、必要な承認をしたうえで、結果をオンラインで申請者に返す。こうした入口から出口までの流れを実現できるのがPegaの強みである。

――FBIの例では、特定の申請業務に適用した結果、全業務の共通プラットフォームに採用されたという。そうした例は多いのか。

渡辺 :海外に限らず、日本でも同様の傾向がある。すべての業務プロセスを一気に効率化する取り組みは、なかなかない。弊社が提供する導入方法論では「マイクロジャーニー」と呼んでいるが、1つの業務を対象に入口から出口までを6~8週間で実現することを提案している。FBIの例でいえば、まず銃の所持に関する管理業務を短期間で実現しようということだ。

 マイクロジャーニーであれば、経済産業省の『DXレポート』が指摘したような「PoC(概念検証)疲れ」にはならない。数週間で業務に適用し、そこからのフィードバックを次のサイクルに生かすことで、連続的な効率化を図ったり、DXにつなげようとする動きを取る企業が増えている。

――COVID-19によって、Pegaの導入状況は変化したか。

宮川 :独バイエルン州の例にもみられるように、大きく変化した。短期間で新しい仕組みを実現するために、どんな実現策があるかを考える形のプロジェクトが世界中で進行している。そうした短期間での実行策としてペガの有効性が評価されている。

 COVID-19対応では、ひな形となるアプリケーションを用意している。公共向けでは、補助金のアプリケーションや免許の許認可申請アプリケーションなどだ。COVID-19対応のソリューションは、他業界に向けても用意している。

――ところで地方自治体などではRPA(ロボティックプロセスオートメ—ション)の導入も進んでいる。RPAと比較してPegaの強みはあるか。

渡辺 :RPAの効果は局所的なケースが多い。我々が提案しているような業務の入口から出口までをデジタル化しようとするアプローチにはなっていないのではないか。

 先日、RPAを導入している企業の顧客対応業務を分析したところ、効率性をさらに40%向上できることが分かった。業務プロセスにおけるボトルネックや、どの担当者に処理が集中しているのかといったことはRPAでは発見できない。

 ただRPAがブームになったことで、デジタル化に目が向いたことは素晴らしことだと思う。業務プロセスのなかには、手付かずの効率化要素があるので、そうした部分の高度化に我々のスタイルを提案し、全体の効率性を高めていきたい。

――政府のデジタル庁構想に続き、自治体がDX推進部門を置くケースも出てきた。だが一方で、IT人材やDX人材の不足を指摘する声も強い。ベンダーやシステムインテグレーターへの依存度が高い日本にあって、官公庁は、よりその傾向が強いだけに、アジャイル開発やローコード開発などに取り組めるだろうか。

宮川 :独バイエルン州の事例はシステムインテグレーターが構築しているが、海外の公共機関では内製している例もある。米メイン州などは、Pegaに強いエンジニアを職員として募集している。こうした点は、日本とは大きく違う。

 だが、日本の中央省庁でも、3000ある手続きのすべてをデジタル化するプロジェクトが始まっている。そのすべてをインテグレーターに開発委託するとコスト高になってしまうため、できるだけPegaを使い、簡単な手続きであれば職員が内製できるような体制を作りたいと言われている。

渡辺 :今は“玉石混交”とった状況だろう。DXの捉え方にもレベルがあり一概にできる/できないは言えない。

 ただITの“民主化”の流れは公共領域でも起こるだろう。官公庁/自治体の職員の方にもITリテラシーが高い方もいれば、各種ソリューションに精通し、どういう体制や方法論でプロジェクトに取り組むべきかについてオーナーシップを持っている方もいる。

 こうした動きは引き続き加速していくだろう。ローコード開発により業務部門が良いと思うインタフェースを作ることが可能になってくる。複雑な業務プロセスを効率化を図るための“本当の要件”は、現場の人しか知らないものだ。業務サイドの人がデザイン思考をもって新しいプロセスをデザインできるのが理想だ。

 その実現に向け当社では「Pega DX Architecture」も提供している。マイクロジャーニー単位でのアジャイル開発を実現するためのソリューションや、要件を階層的に管理する再利用性を高める技術である「Situational Layer Cake」、ソフトウェアを自動生成する「Software That Writes Your Software」などだ。

 最近はローコード開発が一般にも広がってきているが、当社は以前から、人がプログラミング言語を使わなくても、必要なアプリケーションを自動生成できる仕組みの開発に取り組んできた。

 導入メソドロジーにおいても、いまはまだ日本の公共機関に向けて確立されてはいないが、今後のプロジェクトを通じて、日本にヒットするメソドロジーを作成していく。