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この国を変えるモデルになるようなDXを理解得られる顧客と共に進める

ペガジャパンの代表取締役社長 渡辺 宣彦 氏とアカウントエグゼクティブの宮川 裕樹 氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2020年12月17日

デジタル庁の設置が掲げられるなど、官公庁・自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)への動きが急速に動き出した。業務プロセスを抜本的に見直すという。海外では、公共分野における業務の自動化/デジタル化のためのプラットフォームに採用されているという米ペガシステムズの日本法人、ペガジャパンの代表取締役社長の渡辺 宣彦 氏と、同アカウントエグゼクティブの宮川 裕樹 氏に、公共分野におけるDXへの取り組み状況などを聞いた。(聞き手は志度 昌宏=DIGITAL X編集長。文中敬称略)

――「デジタル庁」の設置など、行政のデジタル化が急速に動き始めた。

渡辺 宣彦 氏(以下、渡辺) :米ペガシステムの日本法人、ペガジャパンは2021年で10年目を迎えるが、これまでの顧客層は金融/保険が中心だった。それが。ここ3年ほどは、製造や流通、通信、官公庁などへと顧客層が広がっていた。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、官公庁のデジタル化の動きが活発になっている。

写真1:ペガジャパンの代表取締役社長 渡辺 宣彦 氏

 2020年11月時点では、国内で4つの中央省庁が当社製品を採用し、うち2カ所で本番稼働が始まっている。 当社としては、この国を変えるモデルになるようなDXを、それを理解していただける顧客と共に進みたい。

宮川 裕樹 氏(以下、宮川) :海外に比べると、当社の日本での公共分野への取り組みは遅かったが、Pegaで作成したアプリケーションを実際に見ていただければ、ほとんどが当社提案を受け入れてくれている。それほど日本の中央省庁においては業務の自動化への関心が高まっている。

 先行する海外では、FBI(米司法省連邦捜査局)といった米国の中央政府や自治体のほか、英国の歳入間税庁(HMRC、国税庁に相当)、独バイエルン州政府など、欧州などでも、さまざまな業務に利用されている(図1)。

図1:公共機関におけるPegaの採用例。右の画面内がペガジャパン アカウントエグゼクティブの宮川 裕樹 氏

 FBIは、銃の購入者の審査業務から導入した。年間2000万件以上の審査を3営業日以内に終えるためだ。このプロジェクトをきっかけにFBIは、局内のすべての業務をペガで自動化することを決めている。

 HMRCでは、法人・個人の税の管理からコンタクトセンター業務など広範囲において6万人以上の職員が利用している。2020年は、それまでオンプレミスだったシステムをクラウド環境のPega Cloudに完全移行している。

 バイエルン州政府の場合は、コロナ対策としての中小企業/フリーランス向けの補助金支払において、電子申請のためのアプリケーションを、たった5日間で構築し、3週間程度で20万人以上に給付金を配布した。

 また2020年にPegaを使った最大のプロジェクトは、米国で10年に1度実施される国勢調査のためのシステムだった。米国の国勢調査は今回、初めてWeb調査になり、約30万人の調査員がタブレットを持って各家庭を訪問した。この調査員用のアプリケーションにPegaが採用され、無事に調査を終えた。

 公共機関がPegaを採用する理由は大きく3つある。1つは、「インテリジェントオートメーション」つまり業務の自動化への適用だ。各種申請の審査や承認など、職員が担当する業務の効率化に強いことが評価されている。

 例えば、Amazon.comの利用者が多いのは、画面の使いやすさやお勧めがあるからではなく、翌日には商品が届くことが大きい。その実現には、受注後に、いかに早く商品を手配し届けるかというバックエンドの業務が効率化が重要だ。行政サービスの満足度を高める場合も、業務の自動化は不可欠だ。そのために必要な機能のほぼすべてをPega Platformが提供している。

渡辺 :インテリジェントオートメーションは、従来でいうBPM(ビジネスプロセスマネジメント)のことだ。そこにAI(人工知能)やロボティクスの要素を加えることで、業務プロセスの自動化・効率化を徹底的にできるようにしている。

 当社のソリューションは、このインテリジェントオートメーションと「カスタマーエンゲージメント」の2つの領域がある(図2)。カスタマーエンゲージメントはCRM(顧客関係管理)に関する部分だ。公共機関でいえば、申請のための接点であり、顧客データの分析サービスも含む。

図2:ペガシステムズのサービス全体像