• Interview
  • 共通

マイグレーションはリプラットフォームが主流に、ITの外注はビジネスをコントロールしていないに等しい

米ロケットソフトウェア ハイブリッド クラウド セールス担当シニアバイスプレジデント スチュアート・マギル氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2025年12月8日

DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めにおいて、重要なデータを管理するレガシーシステムのマイグレーションは大きな課題だ。COBOLマイグレーションに古くから取り組んできた旧マイクロフォーカスを買収した米ロケットソフトウェアのハイブリッド クラウド セールス担当シニアバイスプレジデントのスチュアート・マギル(Stuart McGill)氏にレガシーマイグレーションの最新動向を聞いた。

――DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには不可欠だと指摘されて久しいレガシーシステムのマイグレーションだが近年の取り組み状況はどうか。

 ここ2、3年は、大規模なマイグレーションプロジェクトにおいては、アプリケーションプログラムの動作環境だけを切り替える「リプラットフォーム」に立ち戻る傾向がある。プログラムを書き替える「リライト」は上手くいかず、マイグレーションの成果を重視するようになってきたからだ。リプラットフォームは、ビジネス上の成果を最短・低コストで享受できる手段として受け入れられている。

写真1:米ロケットソフトウェア ハイブリッド クラウド セールス担当シニアバイスプレジデントのスチュアート・マギル(Stuart McGill)氏

 リプラットフォームでの移行先としては、オンプレミスの分散型環境が選ばれている。最近ならクラウド環境が選ばれると思うかもしれないが、クラウド環境はミッションクリティカルなシステムの以降先としては効率が悪いケースもあり、今も移行リスクがある。

 ただリライト全般が全て上手くいっていないわけではない。リライトが適用できるケースを含め、小規模なミッションクリティカルなシステムは既にモダナイゼーションが終わっている。まだ終わっていないのは、大規模なミッションクリティカルなシステムだ。クラウド環境への移行リスクも大規模になるほど大きくなる。

問われているのはプログラミング言語ではなくコードが生み出す成果

――生成AI(人工知能)技術の急速な進展で、プログラミングの自動化やプログラミング言語間の変換が進んできている。リライトの有効性も変わっているのではないか。

 確かに生成AI技術の進展に自然言語による指示からのコード生成が可能になりつつある。過去にはプログラミング言語の教育が最も重要視されたが、15年ほど前からはDevOps(開発と運用の統合)ツールを使えるかどうかが重要視されるようになっている。ここも今後はAI技術による自動化が進むだろう。

 だがモダナイゼーションにおいて重要なのはプログラミング言語ではない。プログラムされたコードが生み出す成果が問われている。稼働しているコードがあり、それが今後も稼働し続けられるのであれば、その成果は同じなのだからコードを書き替える必要はないのではないか。

 メインフレーム上で稼働し今も十分な成果を提供し続けているアプリケーションプログラムは、メインフレームのアーキテクチャーのメリットを最大限に利用している。アプリケーションとデータが同じ環境にあることが、その1つだ。それらが別々になると遅延が発生する。

 特にアジア圏では、クラウドサービスの可用性は欧米に比べ低い。物理的に分離されているアベイラビリティゾーン(AZ:Availability Zone)が少ないからだ

 銀行のシステムを考えれば、24時間365日の運用が求められる。そのシステムが提供しているサービスが1日停止してしまえばCEO(最高経営責任者)の首が飛ぶ。そうした運用を支えるには復旧策も重要なため、バックアップ環境を含め複数のアベイラビリティゾーンが同じでレベルになければならない。国家の歳入の3分の1を扱うような銀行にすればシステム上の失敗は決して許されない。

 ただ大手クラウドベンダーはアベイラビリティゾーンを増やすための投資を拡大しているため、こうした問題も今後2年程度で解消するだろう。

――日本では富士通や日立製作所がメインフレーム事業から撤退・縮小を決めているが、米IBMは今もメインフレーマーの「Zシリーズ」の機能強化を図っている。運用性やセキュリティ性で評価する声もある。

 1つの解決策ではあるが、全てに対応できるわけではない。Zシリーズを利用してきた企業の中には、同環境から移行できない企業もある。だが、その数は減ってきている。逆にIBM環境から移行したいと考えているのは、IBM以外が開発したプログラムを利用している企業である。