• News
  • 農林水産

ドローンで農業を支援するファームアイ設立でヤンマーとコニカミノルタが組んだ理由

五味 明子(ITジャーナリスト)
2017年10月3日

天候に左右されないセンシングをコニカミノルタが可能に

 そのヤンマーが今回、パートナーに選んだのがコニカミノルタである。実はコニカミノルタは農業用センシング分野で大きな実績があり、データビジネスにおいても多数のノウハウを持っている。ヤンマーの鈴木氏は「コニカミノルタのセンシング技術のあまりの精度の高さに驚いた」と話す。具体的には、25年に渡って開発してきた葉緑素センシング技術「SPADシリーズ」である。ファームアイは、これを競合他社への差異化技術に挙げる。

 リモートセンシングは、光の反射が物質ごとに異なる特性(反射特性)を活かし、カメラの分光技術を応用した調査方法である。植物の生育状況を測るには、植物の反射特性(赤を吸収し、近赤外線は吸収しない)を利用し、赤の吸収度合いからNDVIを算出。葉中の窒素含量との相関である生育状況や、蛋白含量との相関である食味診断、生育の活性度(出穂時期や収穫時期の予測)といった事項を確認する。ただ、これらデータの計測は天候や時間帯に左右されやすく、ほ場全体の正確なデータを把握するのが難しかった。

 SPADシリーズでは、植物の葉に含まれる葉緑素の値をサンプル採取なしで測定でき、雨や日照時間などにも左右されない。独自アルゴリズムにより、測定データの時系列変化や異常値の判断も、その場で確認できる。ファームアイは、SPADシリーズの技術を拡張し、ドローンに搭載することで、広い、ほ場でも作物の生育状況を高精度に一気に把握できるようにした。

 一方のコニカミノルタは今、デジタルカンパニーへのシフトを急速に進めている(関連記事)。2017年3月に独ベルリンで発表した「Workplace Hub」は、その象徴の1つで、「さまざまな業種・業態で顧客起点の価値をできるデジタルカンパニーを目指す」(コニカミノルタ 執行役 産業光学システム事業本部長 市村雄二氏)という。2017年9月25日には、創薬支援分野で米国ベンチャー企業の買収を発表し事業拡大も図っている。そこでもコニカミノルタは、タンパク質を分析する「高感度細胞組織解析システム」の技術を確立している。

 両社は2014年4月から、農林水産省の先端農業モデル実証実験「ISSA山形」に参加。センシングに使うカメラモジュールの開発や、無人ヘリによる可変施肥のための機器開発、普及米と高品質米における収量維持や品質改善の研究などに取り組んできた。3年間の実証実験を経て、「リモートセンシングにおける解析と施肥設計により農家の収益が約15〜30%アップする」という結果を得ている。

 互いの強みとする技術やノウハウを活かしつつ、実証実験による準備をも重ねてきたうえでの新会社設立となる。鈴木氏はファームアイの優位性を「世界のどこにも存在しない、アグリ事業における一気通貫のバリューサービス」だと語る(写真2)。ファームアイが日本の農業を、どう変えていけるのか。国内企業2社による合弁会社のイノベーションに期待がかかる。

写真2:ファームアイの事業計画

 ちなみに、ファームアイの本社所在地は大阪市北区鶴野町。出資比率はヤンマーが51%、コニカミノルタが49%で、代表取締役社長にはヤンマー産業の代表取締役社長を務めていた吉田博氏が就任した。