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ヤマト運輸とDeNA、オンデマンド宅配「ロボネコヤマト」で無人の自動運転を実証実験

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年4月24日

ヤマト運輸とDeNAは2018年4月24日、オンデマンド型の宅配サービスの開発プロジェクト「ロボネコヤマト」の一環として、自動運転車による実証実験を実施した。これまでの実証実験では、専任ドライバーが乗車しており、オンデマンド型宅配サービスの検証が中心だった。

 実証実験を実施したのは、神奈川県藤沢市内の公道と、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(SST)」内の閉鎖した公道の2カ所。前者では、ドライバーが着座するもののハンドル操作などはしない自動運転を、後者ではドライバーが着座しない無人(助手席に補助者が乗車)状態の自動運転を、それぞれ実施し、後者のみ報道陣に公開した。Fujisawa SSTは、パナソニックの旧工場跡地で開発が進むスマートタウンである。

 ドライバーが着座した自動運転では、全長約6キロメートルを走行し、オンデマンド指定された場所で利用者が荷物を受けとったほか、商店2カ所で集荷した。ただし、荷物の受け渡しにドライバーは関与せず、利用者自らが操作し扱う。

 公道実験では途中、信号制御器からクラウド経由で受け取った信号情報に基づいた発信・停止ができるかどうかも検証した。信号情報のやり取りは、信号制御器に専用の無線通信装置(日本信号製)を取り付け、LTE回線を使いクラウド経由で自動運転車に送った。LTE網を使った信号情報のやり取りは、日本ではこれが初めてという。

 ドライバーが着座しない自動運転では、クルマがオンデマンド指定された場所まで自動で走行して停止。利用者は到着したクルマの後部座席部に設置された宅配ロッカーの画面を操作し、保有するQRコードを読み込ませることで、目的の荷物を取り出す(図1)。サイドのスライドドアーは自動で開閉し、荷物の取り出しが完了するとクルマは再び、自動で発進した。

写真1:無人で自動走行してきたクルマから荷物を取り出す利用者

 ロボネコヤマトは、新しい宅配サービスとして「ほしいときに」「ほしい場所」で荷物を受け取れるオンデマンド型の仕組みを検証するプロジェクト。宅配便の荷物を受け取る「ロボネコデリバリー」と、近隣店舗の商品を発注して受け取る「ロボネコストア」の2つのサービスについて、2017年4月17日から2018年3月31日まで藤沢市内で実験してきた。

 実験中の配送件数は、最高で1日当たり50件、2018年3月には1日平均20ほどを配送。再利用率は47.3%だった。オンデマンド型のため、宅配業界で課題になっている不在率は、0.53%だった。一般の宅配による不在率は20%程度だという。

 実験時の利用者アンケートでは、ロボネコデリバリーを今後も使いたいする回答が99%、ロボネコストアを知人に勧めたいとする回答が97%合ったとしている。

 DeNAオートモーティブ事業本部 ロボットロジスティクスグループリーダーの田中 慎也 氏は、実証実験の成果について、「オンデマンド型サービスのニーズは確認できた。それ以上に、利用者と接しない受け渡し方法と、今後の自動運転を組み合わせれば、高いスキルが求められるセールスドライバーが不要になり、雇用の裾野を広げ、人材不足に一石を投じる可能性がある」と分析する(写真2)。

写真2:DeNAオートモーティブ事業本部 ロボットロジスティクスグループリーダーの田中 慎也 氏

 両社は、ドライバーが運転するロボネコヤマトについては、実サービスとしての投入の検討を始めている。今後は、自動運転による課題の洗い出しや改善点などを検討していく。