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米シリコンバレーのSAP Labで開かれたWorkshopに見た「デザインシンキング」の実力

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年6月18日

参加者に合わせたテーマ設定から始まる

 さて、いよいよアイデアソンである。Leifer教授の講演趣旨が、SAPが実施するデザインシンニングにどう反映されているのだろうか。

 アイデアソンのテーマは、「世界の貧困、健康、教育の不平等の解決といったSDGsの達成のために、今一度日本企業のリーダーが取り組める実践的なイノベーションとは?」である。

 SDGsとは、持続可能な世界に向けて国連が、2030年までに解決することを定めた目標のこと。17のゴール、169のターゲットが設定されている。やや大きすぎるテーマのようにも感じるし、幅広い知識や経験が求められそうだ。

 だがテーマ設定の理由をファシリテーターのリーダーを務めるSAPジャパンの原 弘美カスタマーイノベーションプリンシパルは、「今回は参加者の事業内容も興味の対象も異なっているため、テーマを絞り込むと対話が偏ってしまう。あえて大きなテーマに設定している」と説明する。テーマ設定からデザインシンキングの準備は始まっているのである。

 参加者は4つのチームに分かれ課題に取り組んでいく。6〜7人からなるチームごとに1人のファシリテーターが付いている(写真4)。

写真4:各チームに分かれてアイデアソンに取り組む参加者

 以下、アイデアソンのプロセスを時系列で追ってみる。デザインシンキング好きという福田社長自身も、1つのチームに混じり込んだ。みなさんも「自分だったら」と実際に考えながら読み進めてほしい。

解決すべき課題を正しく共有するために議論する

(1)SAPが用意したSDGsの課題の中から、チームとしてどの課題に取り組むかを決める。各人が選択したテーマをチームに持ち帰ったうえで、どれか1つに絞り込む。

(2)テーマが決まれば、すでに世の中に存在している解決策を洗い出す。参加者それぞれが付箋紙に書き出し、チーム内で共有する。現状把握ということだろう。

(3)選んだテーマがSDGsの、どのゴールに関連するかを決める。SDGsに定められている定義と照らし合わせながら、解決すべき課題を、より明確にするためのプロセスのようだ。この段階でも、参加者間のテーマについての認識にはズレがあるようだった。与えられた情報が少なく、かつ追加調査をする時間もないので仕方がないと言える。

(4)絞り込んだ課題に関連する人物像を設定する。「ターゲット(対象者)」と「直接的な関係者」「間接的な関係者」の3つの枠で考える。誰のための解決策であるべきか、その際のステークホルダーは誰かを明確にするわけだ。そうして初めて、ターゲットに焦点を当てて解決策を考える。ターゲットと直接的な関係の見極めは難しそうだった。

写真5:課題に関するステークホルダーを明確にする

 ここまでの場面では、アイデアソン前にLeifer教授が投げ捨てた付箋紙も有用なツールとして活用されていた。分類したり試行錯誤したりするには、張り直せる付箋紙は有効なことは、誰も否定しないだろう。

(5)ターゲットのペルソナを考える。ペルソナは、「誰のため」を考えるために、対象者をより具体的に想定するものだ。出身地や名前、家族構成、趣味などを考え架空の人物を作り出す。ペルソナ自体は目新しいものではないが、ここでの設定で、ソリューションを考える際の前提条件、たとえば経済情勢や通信環境なども変わってくるため、生み出されるソリューションも、より具体的になる。