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三越伊勢丹が来店客増に向け投入した衣類レンタル用アプリ「CARITE」、富士通との“共創”で開発

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年8月6日

最新サービスは富士通との“共創”で開発

 三越伊勢丹にとって初のシェアリングサービスの仕組みは、富士通との「共創(オープンイノベーション)」で開発した。東海林氏は「百貨店ノウハウを持つ当社の強みと、最新技術に強い富士通の知見とを持ち寄ることで、新たなサービスを実現できた」と話す。

 一方、富士通の共創ビジネスグループVPである佐藤 俊也 氏は両者の関係を「運命共同体」と表現する。「一般的なシステム構築契約ではリスクは顧客の側にある。今回は、プラットフォームやアプリケーション開発などで当社もリスクを負っている。将来的にCARITEの事業が成功すれば、レベニューシェアなども検討する」(同)という。

 具体的には、富士通が流通・小売業向けの共通機能を提供するクラウドプラットフォーム上に、CARITE専用のアプリケーションを開発した。CARITE用に機能拡張したプラットフォームは他企業にも展開する。そこでは「AI(人工知能)によるレコメンデーションなども開発中」(佐藤氏)と明かす。

 CARITEのオープン期間は、2018年8月1日〜11月30日までの期間限定。利用状況を見ながら12月以降の扱いを考えるとする。ただしCARITE自体は、「ドレスレンタルに特化した仕組みにはなっていない」(神谷マネージャー)。ドレスレンタルだからといって女性向けにチューニングするといったことはせず、「操作方法などのユーザーインタフェース(UI)に力点を置いている」(同)というから、他分野への展開を念頭に置いているというわけだ。

写真3:婦人用ドレスからスタートした「CARITE」だが「他の衣料品への展開を想定して開発している」という

 百貨店の業績は決して芳しくはない。ネット専業者が売上高で大きく上回っているほか、インバウンド需要にも陰りが見える。イートインを含めた食ビジネスの拡大も図るが、本来主力であるはずの衣料品分野は手詰まり感が強かった。三越伊勢丹が投入したCARITEは、シェアリングサービスへの挑戦であり、同時にリアル店舗がもつ強みの検証でもある。

 また共創を強調する富士通にしても”デジタル化の専門家”としての責務を果たせているのかどうかが問われることになる。CARITEは、さまざまな検証項目を含んだ取り組みなのである。