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三越伊勢丹が来店客増に向け投入した衣類レンタル用アプリ「CARITE」、富士通との“共創”で開発

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年8月6日

三越伊勢丹は2018年8月1日、ドレスなどの衣服をレンタルするショップ「CARITE(カリテ)」を銀座三越にオープンさせた。スマートフォン用アプリケーションを導入することで、ネットと店頭のいずれでもレンタルを予約しキャッシュレスで決済ができる。百貨店離れが進む若年層への訴求力を期待する。スマホアプリなどの仕組みは、富士通との”共創(オープンイノベーション)”で開発した。

 三越伊勢丹が2018年8月1日、銀座三越にオープンさせた「CARITE(カリテ)」は、結婚式などに参列する際のドレスをレンタルするショップ。2泊3日のレンタルを、配送料やクリーニング代金を含め中心価格帯1万2000〜1万5000円で提供。まずは「DHELA(デラ」「FLICKA(フリッカ)」「Helmut Land(ヘルームト ラング)」など13ブランド約200着を取り扱う。

 専用のスマートフォン用アプリケーション「CARTE」を提供することで、店頭でもネット上でも同じ手順で予約から配送/手渡し、カード決済までを処理できるのが特徴だ。具体的には、気に入った商品を指定し、配送方法や受取日を決め、クレジットカードで決済する。商品の指定は、ネット上では表示される商品写真から選択、店頭では商品に添付されているQRコードを読み込む(写真1)。使用後は、クリーニングせずに返送すれば良い。

写真1:三越伊勢丹の「CARITE(カリテ)」では、ドレスなどをネットと店舗のいずれでもレンタルを申し込める

 三越伊勢丹にとってCARITEは、シェアリングサービスに参入する第1弾になる。執行役員 百貨店事業部 三越銀座店長の東海林 憲昭 氏は、「百貨店離れが指摘されて久しいが、シェアリングなどのサービス投入は遅すぎた感もある。所有から利用へと販売行動を広げつつ、実店舗を持つ強みを生かしたサービス展開につなげたい」と意気込む(写真2)。

写真2:「CARITE」を発表する三越伊勢丹 執行役員 百貨店事業部 三越銀座店長の東海林 憲昭 氏(左)と、富士通 共創ビジネスグループ VPの佐藤 俊也 氏

 しかし、オンラインでも操作が完結するCARITEで、実店舗の強みをどう生かすのか。仕掛けはいくつかある。1つは、実物を店頭で見たり試着ができること。ネットビジネスでは、サイズ違いなどに起因する返品が今も課題になっている。晴れ舞台で着るドレスともなれば、なおさらだろう。三越伊勢丹にすれば、「一度来店してもらえればサイズは分かるので、その後のネットでの対応も変えられる」と見る。

 2つ目は、ネット対応の差別化要素としての販売員とのチャット機能である。スタイリングなどについてチャットで相談できる。ただし、直接チャットをするためには店頭で販売員と対話し、フォロー/フォローワーの関係を結ばなければならない。それまではチャット対応のオペレーターによる応対になる。これは、「店頭の販売員が接客とチャットの両方をこなすことを考えての体制」(百貨店事業本部MD戦略部MD政策担当マネージャーの神谷 友貴 氏)でもある。

 もう1つは、アプリの操作ログなどのビッグデータ。これを解析することで、より顧客のニーズにあわせたサービス内容や店舗作りに取り組む考えだ。

 CARITEの正式オープンに先立ち同社は、自社社員を対象にCARITEの事前検証を2018年6月に実施している。社内検証では「ドレスのレンタルへのニーズを含め、サービス開始早々に反応があり、手応えを感じている」(神谷氏)という。