• News
  • 共通

スタートアップのビジネスを支えるアーキテクチャーと、その効果

AWS Summit Tokyoの「Startup Architecture of the year 2019」より

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2019年8月20日

double jump.tokyo:ブロックチェーンRPGの課金以外をAWSで構築

 ブロックチェーン技術を使ったゲーム開発に特化するdouble jump.tokyo。2018年11月にRPGの「MyCryptoHeroes」をリリースした。ゲーム資産をイーサリアム・分散ストレージIPFSを使って中央集権制で管理し、ゲーム機能をAWS上に構築している。

 ゲーム資産をブロックチェーン技術で管理することで、ユーザーはゲームの枠を越えたゲーム資産の活用が見込める。ただリードエンジニアの満足 亮 氏は、「新規の領域に飛び込むに当たって、ブロックチェーンによる決済以外の部分では、信頼と実績のあるAWS、とりわけAurora・S3・Lambdaを活用しようと考えた」と話す(写真11)。

写真11:double jump.tokyoのリードエンジニアである満足 亮

 MyCryptoHeroesのためのアーキテクチャーは2カ月で構築した(写真12)。すでに累計ユーザー数は5万人、1日のアクティブユーザー数(DAU)は6000。サービス開始から6か月間の累計売上高は1万2000ETH(イーサリアム)を超えたという。

写真12:MyCryptoHeroesにおけるアーキテクチャーの工夫点

RevComm:音声認識クラスタのノード数を自動調整

 RevCommは、音声をAIで分析できるIP電話サービス「MiiTel」を運営している。サービス開始から8カ月で900ユーザーが利用し、100万件以上の通話が発着信されている。音声を扱うサービスの性質から、「コストは抑えつつも、高品質・高安定である必要があった」とCTOの平村 健勝 氏は、開発を振り返る(写真13)。

写真13:RevCommのCTOを務める平村 健勝 氏

 高品質を求める音声通信サーバーは、あえてマネージドサービスを使わず枯れた技術を活用。Webではサイジングとデプロイを自動化し効率を高めた。セキュリティはマネージドサービスの活用で担保した(写真14)。

写真14:「MiiTel」の音声通信サーバーのアーキテクチャー

 音声認識のクラスタは、数分の処理遅延が許容されるものの、集中時にはリクエストが急増するため高い性能が必要になる。そのためメッセージングキューサービスの「AWS SQS」でSpot Instanceを作り、ノード数を自動調整できるようにすることで、オンデマンドのインスタンスと比べ70%以上のコスト削減になっているという。

Startup Architecture Of The YearはLamda活用のスタメンに

 全ピッチが終了し、数十分の審査の後、Startup Architecture Of The Year 2019とソリューションアーキテクト賞、オーディエン賞の3つが選ばれた。

 Startup Architecture Of The Year 2019を受賞したのは、企業向けSNS「TUNAG」を運営するスタメン(写真15)。副賞として2019年12月に米ラスベガスで開かれるAWSの年次位ベントの「re:Invent 2019」のペアチケットを受け取った。

写真15:Startup Architecture Of The Year 2019を受賞したスタメン。右がプレゼンした松谷 勇史朗 氏

 審査員からは「試行錯誤がきちんどできていて素晴らしい。さらなる発展を願っている」というコメントが寄せられた。

 ソリューションアーキテクト賞は、RevCommが受賞した。マイクロサービスのアーキテクチャーのうえで、コントローラブルな環境を構築し、効果を数値として評価できているのが選定理由である。

 本イベント参加者の投票によるオーディエンス賞に選ばれたのは、ストックマーク。審査員の1人は、「自分が携わったことのあるアーキテクチャーと比較していたが、面白さを感じた」と評価した。