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スタートアップのビジネスを支えるアーキテクチャーと、その効果

AWS Summit Tokyoの「Startup Architecture of the year 2019」より

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2019年8月20日

千葉・幕張メッセで2019年6月に開かれた「AWS Summit Tokyo 2019」」で第2回の「Startup Architecture of the year」が開催された。事前審査で選ばれた7社が競った決勝大会。選ばれたアーキテクチャーとは?

 「Startup Architecture of the year」はアーキテクチャーに焦点を当てたピッチコンテスト。スタートアップが対象のコンテストではビジネスモデルに焦点が当たることが多いのに対し、「ビジネスの拡大にシステムが耐えられるのか」「セキュリティ上の問題はないのか」といった観点で評価する。

 審査員は、グリーの藤本 真樹 氏、DMM.comの松本 勇気 氏、メルカリの名村 卓 氏、ユーザベースの竹内 秀行 氏、delyの大竹 雅登 氏、フロムスクラッチの井戸端 洋彰 氏の6人。いずれもCTO(Chief Technology Officer)クラスの技術責任者である。

 決勝大会に臨んだのは、事前審査で選ばれた創業3年以内のスタートアップ企業7社。5分という短い制限時間内で、それぞれが各社のアーキテクチャー上の工夫などについてプレゼンテーションした。

 まずは登壇順に、各社のプレゼン内容を紹介する。

「funds」のクラウドポート:古いインスタンスを定期的にドレイン

 クラウドポートは、貸付ファンドのオンラインマーケット「funds」を運営する第二種金融商品取引業者。資産を形成したい個人とお金を借りたい企業を結ぶサービスを提供する。

 登壇したIT・業務管理部長/エンジニアの若松 慶信 氏は、「当社は少数精鋭のエンジニアで開発しているが、が選任のインフラエンジニアは不在だ。そのため枯れた技術を活用するという視点で構成を検討している」と説明する(写真1)。

写真1:クラウドポートのIT・業務管理部長/エンジニアである若松 慶信 氏

 工夫点としては、定期的に古いインスタンスをドレイン(drain:削除)することで、アドホックな設定や、脆弱性を突いてくるエクスプロイトの定着を防止していることを挙げる(写真2)。

写真2:ラウドポートのアーキテクチャー上の工夫点

 これにより、インシデントの発生リスクを低減するとともに、インシデントが発生した場合の調査・分析を可能にすることが、顧客の信頼獲得につながっているとした。

「保険API」のjustInCase:月間の機能リリース数を12.5倍に

 justInCaseは、「スマホ保険」やP2P(ピアツーピア)型の「わりかん保険」の個人向けサービスと、「保険API」を提供する。保険APIでは、保険サービスを自社サービスに数行のコードを郭だけで組み込めるサービスである。

 同社エンジニアの小笠原 寛明 氏は、保険APIについて「プレスリリースしたもののリリースが3カ月遅れたうえに失敗するなど、エンジニアとして“ときめかない”状況が続いた」と打ち明ける(写真3)。

写真3:justInCaseの小笠原 寛明 氏

 そのため「テストを書きたくなる」「デプロイがしたくなる」をポイントにシステムを整理した。エンドポイントや認証の仕組みを調整することで月間の機能リリース数は約7.3本から約91.6本へと12.5倍に高まったという(写真)4。

写真4:justInCaseがアーキテクチャーの見直しで得た効果

 新たに参画したエンジニアが活躍し「新しい風が良い結果を生んだ好例」(小笠原氏)とした。