新型コロナウイルス対策に向けたオープンなコラボレーションが拡大、米GitHubの開発基盤上で

　米GitHubは現在、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）に関連する公益性が高いオープンソース／オープンコラボレーション（協働）プロジェクトを支援している。COVID-19に関する情報の追跡や理解、対策を目的とする種々のプロジェクトが、同社のソフトウェア開発基盤「GitHub」上で展開され、世界規模で活動が拡大・活発になっている。その中の、いくつかを紹介する。

新型コロナウイルス症例：米ジョンズ・ホプキンズ大学

　新型コロナウイルスへの感染症例を集めたデータセットとダッシュボード。種々の情報源から集めたデータをWHO（世界保健機関）などの情報源と照合して検証している。各国の初感染例に関する情報が、WHOよりも早く伝えられており、適切な対処方法を感染拡大の早い段階で提供可能にしている。世界中の疫学者や統計学者、ジャーナリストなどが正規データソースの1つとして引用している。

　ダッシュボードは、同大学のCSSE（Center for Systems Science and Engineering：システムサイエンス・エンジニアリングセンター）が開発した。最新情報を発信するWebサイトは、ボランティアのプログラマーやデータサイエンティストがオープンソースで構築した。予測モデルのソースコードも提供している。

新型コロナウイルス症例：米ワシントン大学 保健指標評価研究所

感染症例のデータセットとダッシュボード。本データセットには、感染症状の発現日や確認日など、各患者の詳細なデータが含まれている。COVID-19の再生産数や潜伏期間といった統計データを導くために使用されている。

Novel Coronavirus Infection Map：ワシントン大学Humanistic GIS Lab

　新型コロナウイルスの拡散状況を示すマップ。世界的な感染拡大の履歴と各国の感染状況を視覚的に表示する。多数の政府組織や公衆衛生機関から取得したデータを反映している。

住民向け情報提供アプリ：WHO（世界保健機関）

　WHO（世界保健機関）によるCOVID-19と対峙する世界中の人々を対象にした支援用モバイルアプリケーションの開発プロジェクト。住民に地域情報を提供するほか、より正確な情報を伝えるための公衆衛生当局へのフィードバック機能を備える。

　オープンソースのプロジェクトとしての活動もある。

Low-Cost Open-Source Ventilator or PAPR

　人工呼吸器を低コストで自作する方法を集めている。医療機関で標準的な人工呼吸器が不足した場合、ここでの情報が救命に役立つ可能性がある。

Nextstrain

　病原体ゲノムを追跡・解析する。COVID-19を疫学的に理解し、大規模な感染拡大を防ぐ対策の強化を目指す。遺伝疫学的データを提供するダッシュボードを介して、ヒト コロナウイルスの突然変異に関わる進化的関係を示している。

Folding＠homeによるCOVID-19プロジェクト

　分子動力学モデリングを分散コンピューティング環境で実行するFolding@homeがCOVID-19に特化したプロジェクトとして推進し、創薬標的の候補になるタンパク質の発見に取り組んでいる。コンピューティング環境は、ボランティアがPCの計算処理能力をインターネットを介して提供し、それらを組み合わせて構築する。データセットやソフトウェアはすべて公開されている。

　国家や自治体での取り組みもある。

イタリア

　COVID-19に関する国内最新データのすべてを共有する。このデータから、イタリア全土の感染状況をリアルタイムに追跡するダッシュボードが作られている。東京やチューリッヒなども同様に感染情報をリアルタイムに保存・共有している。

中国・武漢

　COVID-19に対峙している人々のために、病院や工場、調達などの情報をリアルタイムに同期させるためのデータサービスを構築する。

　これらのほかにも、胸部X線写真リポジトリなど、診断精度を上げ感染予測を支援するAI（人工知能）の開発を目的とした取り組みや、感染拡大に伴う医療機関の負担を判断するための感染シミュレーター「COVID-19 Scenarios」、各国のCOVID-19感染者数を比較し今後の感染拡大の予測もできる「Predict COVID-19」など、さまざまな取り組みがある。

　GitHubは、種々のオープンソースプロジェクトを支援する準備があるとしており、問い合わせを受け付けている。