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サービスデザインは日本に浸透するか、NTTデータが新ブランド「Tangity(タンジティ)」で展開へ

野々下 裕子(ITジャーナリスト)
2020年6月19日

 Tangityでは、以下の3つを活動の柱に挙げる。

(1)共通のメソドロジー:グローバルで事例・人材の共有を促進し、統一したメソドロジー(方法論)を体系化する。各国事情に合わせたカスタマイズも可能にする
(2)多様なチームメンバー:デザイン、ビジネス、技術などの専門家が各国のデザインスタジオに所属させる
(3)幅広い事例とノウハウ:グローバルの成功事例を収集し共有する

 NDDNではサービスデザインのプロセスを、戦略、コンセプト、開発、サービスに分け、それぞれの領域を専門のデザイナーが担当する。具体的には、次のようなデザイナーや開発者だ(図3)。

図3:サービスデザインのプロセスにあわせた専門デザイナーが担当する。

ビジネスデザイナー :市場やユーザー動向を分析する
サービスデザイナー :何が求められているかをコンセプトに落とし込む
UX-UI(User Experience - User Interface)デザイナー :実際の形へ落とし込む
フロントエンドディベロッパー :アジャイル開発などでデザインの有効性を検証する

 彼らによる活動全体をプロジェクトマネジャーが統括する(図3)。コンサルティングに近いサービスも提供する。

 サービスデザイン領域のデザイナーは、世界でも取り合いになるほど人気の職種だ。NTTデータはTangityの設立により、2020年度に世界で700人、2021年度には1000人の採用を目指す。そのうち日本では2020年内に50人、20201年は100人ほどの獲得を予定している。

 若手や中堅デザイナーの育成に向けては、以前から連携してきたイタリアのミラノ工科大学をはじめとする各国の大学と共に、デザイナーのレベルや業務状況にあわせた複数のプログラムを実施する計画である。

売上高で世界トップ5に向けたテコの1つに

 NTTデータはサービスデザイン領域を、ブロックチェーンやAI(人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などをテーマにする7つのCoE(Center of Excellence)の1つに位置付ける。

 CoEは、グループ全体が持つグローバルの知見を集約し、人材を育成するための拠点であり、グループ内外と連携しながら顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速し、グローバル市場での成長をうながしていく。NTTデータの企業目標は、ITサービス業界の売上高でグローバルトップ5に入ることである。

 サービスデザイン領域では世界的なブランドとして、アクセンチュアの「FJORD(フィヨルド)」、電通が連携する「frog design(フロッグデザイン)」、博報堂が連携する「IDEO(アイディオ)」などがある。

 それらに対してTangityは、デザインコンサルティングファームとしては珍しくM&A(企業の統合・買収)ではなくオーガニックで成長し、ものづくりや運用で信用力を持つNDDNの活動を強みに対抗していくとする(図4)。

図4:サービスデザイン領域における「Tangity」の競争力の自己分析

 欧米ではサービスデザインの手法は、さまざまな領域へと広がっており、活用する企業間の競争も激化している。新型コロナウイルスの登場で、スマホアプリを使ってスーパーで買い物をしたり、診察やカウンセリングをオンラインで受けたりと、デジタルとリアルの境界が薄れ、サービスに対する価値が変わりつつある。

 その中で、日本ならではの文化を尊重しながらグローバルな提案を目指すというTangityのブランドが、どれだけ認知され浸透していくのか。これからの動きに注目していきたい。