• News
  • 交通

小田急のMaaS用戦略アプリ「EMot」、異業種連携を支える開発・実行基盤はAWS

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年8月28日

MaaSの基盤機能はAWS上でマイクロサービス化

 EMotは、ヴァル研究所が開発に協力したMaaS基盤「MaaS Japan」上で動いている。同社の乗換案内アプリ「『駅すぱあと」の経路検索エンジンを利用し、クラウドのAWS(Amazon Web Services)上で開発された。

 ヴァル研究所の執行役員CTOの見川 孝太 氏は、「MaaS Japanには3つの特徴がある」と説明する。1つは、各機能が疎結合なマイクロサービスの組み合わせでできており機能拡張が容易なこと。もう1つはサーバレスで開発していること。そして、極力PaaS(Platform as a Services)を使うことで運用コストを削減していることである。

写真2:ヴァル研究所 執行役員CTOの見川 孝太 氏

 「サーバレスにはAWSの『Lambda』を利用した。開発者はサービスの実装のみに集中できるメリットがある。同様にPaaSの積極的な利用で、不要な実装作業をなくし、シンプルで低コストの運用を目指している」(見川氏)という。

 MaaS Japanでは、外部APIとの連携にも積極的に取り組み、「他社サービスとの連携が容易な設計になっている」(見川氏)とする。駅すぱあとのエンジンともAPIで接続しているほか、MaaS Japan自体のAPIも公開する。全体的にシンプルな機能群として整理できたため、「当社が扱っている他のシステムと比べても運用負荷が低い」と見川氏は評価する。

 ただ、機能の実装にあっては、「それをフロント側に置くかプラットフォーム側に置くかの切り分けが明確になりにくいという注意点もある」(見川氏)

 MaaS JapanをAWS上に構築した理由について見川氏は、「ビジネスの速度優先で開発にあたったため、最も速く開発できる環境が必要だった。機能の追加や変更に柔軟に対応できること、サービスの拡大に応じてスケールアップできることなどから選択した。なにより、我々が最も使い慣れているクラウドということが大きかった」と説明する。

 ヴァル研究所はAWSを2012年に東京リージョンが開設されたときから利用を開始。現在もサービスのほとんどをAWS上で提供している。「社内にもAWSの開発ノウハウが蓄積されているほか、社外にも知見が多いため迷ったことはすぐに探せる」(見川氏)という。

コネクテッドカー向けサービスを2020年内に大幅に拡張

 AWSジャパンの技術統括本部長 執行役員の岡嵜 禎 氏は、MaaSへの取り組みについて「MaaSを単独の企業が実現するのは難しい。異業種の他社とのスピーディーな連携が必要になる。その際に重要なのは、セキュアなデータ連携、グローバルな連携への対応力、そして開発時の学習コストの最小化だ」と話す。

写真3:アマゾン ウェブ サービス ジャパン 技術統括本部長 執行役員の岡嵜 禎 氏

 MaaS市場の拡大を見越しAWSでは、2017年から提供しているコネクテッドカー向けのソリューション「AWS Connected Mobility Solution(CMS)」の大幅な機能拡張を計画している。2020年中にアップデート版を提供開始するという。

図3:コネクテッドカー向けのソリューション「AWS Connected Mobility Solution(CMS)」の概念

 岡嵜 氏は「AWS上ではすでに、世界中で数多くのMaaS関連サービスが動いている。複数の企業間で同じ技術基盤、技術情報を共有することで、魅力的なサービスを迅速に開発できる」と説明した。