• News
  • 共通

AIで学習するガスセンサーが切り拓くIoTの新しい世界

システムに“嗅覚”を与えるボッシュ センサーテックの「BME688」

DIGITAL X 編集部
2021年12月21日

“臭い”をデータ化できるセンサーが新たなサービスを生み出す

 BME688をボッシュ センサーテックが市場に投入したのは2021年のこと。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大していたこともあり、COVID-19対策としての3密状況の検知用デバイスにも使われた。ガスセンサーの主要用途の1つである、工場やプラントにおけるガス漏れや油漏れ検知のための問い合わせも増えている。

 これらの領域では、「AI技術による学習機能に加え、BME688が温湿度センサーを備えることで、単機能のセンサーよりも環境をより正確に測定できる点が評価されています。こうした多機能性が適用可能な領域を広げており、BME688独自の強みになります」と宮地氏は話す。

 そのうえでボッシュ センサーテック ジャパンがBME688の適用領域拡大に向け本腰を入れるのが“臭い”を切り口とした新たな用途開拓である。

 ボッシュ センサーテック ジャパン 営業の岩間奈緒子氏は、「日々の生活において人は、臭いを嗅ぐことでも様々な判断をしています。ただ従来は汎用的なガスセンサーが少なかったため、“臭い”のデジタル化は進んできませんでした。BME688においては、“臭い”のデジタル化を工場やプラント以外の民生領域に、どこまで広げ、深掘りできるかがミッションになります」と力を込める。

写真8:ボッシュ センサーテック ジャパン 営業の岩間 奈緒子 氏

 すでに野菜や果物、肉類などの成熟度や腐敗度などを臭いから把握する仕組みの検証が進んでいるという。高齢者介護といった領域では、排泄物などの臭いから要介護者への支援の必要性を検知することで入居者のQoL(Quality of Life:生活の質)を高めようとする取り組みも始まっている。

 新領域の拡大に向けては、BME688を使った各種の新サービスを開発したり共同で提案したりするためのパートナー企業の発掘にも力を入れている。かつて加速度センサーを携帯電話会社に提案した経験を持つ日吉氏は、当時を振り返りながらもBME688の可能性に大きな期待を寄せる。

 「携帯電話メーカー各社も当初、『携帯に加速度センサーを載せて何をするのか』といった反応でしたが、今では当たり前になり、加速度センサーが搭載されているからこそ登場し普及したサービスも少なくありません。BME688によりスマホが嗅覚を持つことをイメージできれば、それを活用するアイデアは次々と登場するのではないでしょうか。ただ我々だけで考えられるアイデアは限られるだけに、多くの方々の力をお借りしたい。それがIoTの新たな進化につながると確信しています」

 スマホはもとより、各種センサーで取得したデータを蓄積・分析することで様々なサービスが登場し、社会に広がっていることは紛れのない事実。そこでは、実態を表すデータが豊富であればあるほど、より利用者に沿ったサービス開発が可能になる。

 昨今のAI技術を活用したデータ分析では、行動データや表情を示す画像データから人の感情をも把握しようという動きもある。ここに臭いのデータが加われば、個々人の感情に、より正確に迫れるかもしれない。

 ほかにも各種デバイスが臭いセンサーを持たないために、他のデータで代替したり、そもそも臭いを感知しようとの発想にいたらなかったりしているのが現状だろう。

 「スマホが嗅覚を持つようになれば」と考えれば、例えば食べ物の領域だけでも、グルメのレポートやランキングの仕組みは大きく変わるだろうし、旬の時期を知らせることで食品ロスの削減に寄与できるかもしれない。

 さらには人が感じられない“無臭”のガスも検知できることから、災害防止などの従来の用途に加え、私たちが全く感知できていなかった臭いの世界が構築されていく可能性もある。

 デジタルな世界に、人の“五感”の1つである嗅覚が浸透していけば、暮らしや社会を支えるIoTサービスは確実に新たなステージに引き上げられるだろう。BME688は、そんな大きな期待が持てるガスセンサーだ。「スマホが嗅覚を持つようになれば」、読者のみなさんはどんな臭いの世界を描き出すだろうか。

製品に関するお問い合せ先

お問い合わせ | 加賀電子株式会社(taxan.co.jp)

お問い合わせフォーム| 株式会社レスターエレクトロニクス(restar-ele.com)