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人とプロセスとデータをつなぐ、米Autodeskが見据えるwithコロナのチームワークの作り方【前編】

米ニューオリンズで開かれた「Autodesk University 2022」より

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2022年11月18日

 プラットフォーム化に向けてAutodeskは2021年から、製品間でのデータ交換機能の実現に力を入れていた。

 例えば、建築・土木業界向けのBIM(Building Information Modeling)ソフトウェア「Revit」では、3D(3次元)CAD(コンピューターによる設計)ソフトウェア「Inventor」(Autodesk製)や「Rhinoceros」(米Robert McNeel & Associates製)、ワークフローツールの「Microsoft Power Automate」(米Microsoft製)とのAPI連携などを進め、ある工程での変更が別のアプリケーションに引き継げるようにしている。

 「オープンエコシステムの促進があらゆる作業に対して不可欠になる」(アナグノスト氏)として、同社製ソフトウェアのオープン化も進める。3DのCG(コンピューターグラフィックス)制作ソフトウェア「Maya」のプラグインソフト「Bifrost」の開発者向け公開が、その一例。ビジュアルエフェクトの作成のスタジオワークフローへの組み込みを推進する。

3種の新クラウド環境を業務・業界別に用意

 Autodeskの3つのプラットフォームについて、今回のイベントでは、連携する製品の利用企業が登壇し、それぞれで、どのようなチームビルディングが必要になってきているかを説明した。

建設・土木向けAutodesk Forma:英・南極観測隊の新基地建設

 Autodesk Formaは、建設・土木(AEC:Architecture, Engineering & Construction)向けプラットフォームとして、建設・土木のプロジェクトを対象に、計画から設計、構築、運用までのワークフローを統合し、データの共有を可能にする。「上流から下流までと、その間のフェーズにおいて、必要なツールを接続し、設計段階で生まれるBIMデータをプロジェクト全体で活用する」(アナグノスト氏)のが目的だ。施工管理ソフトウェア「BIM 360」やRevitなどとの連携を強めている。

 同分野の利用者として登壇したのは、英国の南極観測隊「BAS(British Antarctic Survey)」のデイビッド・ブランド(David Brand)氏(写真3)。老朽化した研究施設の建て替えや波止場の建設などを手掛ける「南極インフラ近代化プログラム(Antarctic Infrastructure Modernisation Programme)」に取り組んでいる。10年間で6棟を立て替える。

写真3:英国の南極観測隊「BAS(British Antarctic Survey)」のデイビッド・ブランド(David Brand)氏

 観測隊本部のある英ケンブリッジから南極基地までは1万5000キロメートル。建設可能な期間や建設作業員数に限りがあるなか、「最小限のリソースで開発できるよう、情報共有に集中し全員が建設についてのトレーニングを受けることで最高の効率で成果物を提供できるようにした」(ブランド氏)という。

 具体的には、実際の建設の前に実施したデジタル環境でのリハーサルでリスクを分析し、効率的な建設に向けて準備した。エンジニアリング企業のデンマークRanbollやスウェーデンSwecoとの協業においてはBIM 360を共同作業環境に採用し、設計情報を共有した。波止場では、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術を使ってオペレーターが南極の重機操作をシミュレーションするなどしたという。

メディア・エンタメ向けAutodesk Flow:米Amazon Studiosの映像制作

 Autodesk Flow は、メディア・エンタテインメント業界におけるコンテンツ作成および制作管理の機能群を統合するプラットフォームである。「デジタル資産を統合しワークフローを整理することで、企画から最終的な納品までの生産ライフサイクル全体における一貫したチームワーキングを可能にする」(アナグノスト氏)という。3D CGソフトウェアのMayaや撮影データクラウド「Moxion」との連携を図る。

 同分野の利用者としては、米Amazon.comの映像制作子会社であるAmazon StudiosでHead of Product Strategyを務めるエリック・アイバーソン(Eric Iverson)氏が登壇し、Amazon Prime Videoが2022年9月に公開したばかりの『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』を挙げながら、制作現場の現状を語った(写真4)。

写真4:米Amazon Studios Head of Product Strategyのエリック・アイバーソン(Eric Iverson)氏