• News
  • 製造

ハードからソフト、サービスまでの一元管理が持続可能なものづくりを可能に

米PTCの年次イベント「LiveWorx 2023」に登壇したジム・へプルマンCEO

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年8月18日

 そのサービス戦略を実行するうえでも、部品単位での追跡・管理が重要になる。ソフトウェアであればネット経由で変更できるが、一度顧客の手に渡ったハードウェアを変更するのは容易ではない。一方で製造工程は、多様化する顧客ニーズに対応するための部品化・モジュール化が進んでいる。だからこそ、部品・モジュール単位での追跡が意味を持ってくる。

 モジュール単位での製品追跡を実践する企業の1社が、スウェーデンのボルボ・グループである。車体や、エンジン、運転席などのモジュールを“再利用”することで、開発コストや部品在庫を減らし、収益性を高めている(図1)。各モジュールの設計データである3D(3次元)モデルに、製造・サービス工程の情報をひも付け、シミュレーションによって設計を最適化するモデルベース開発を実現している。

図1:スウェーデンのボルボ・グループはモジュール化により、その組み合わせで顧客ニーズに応えている

サービスを含めた一元管理には必要な機能のSaaS化が必要

 こうしたハードウェアからソフトウェア、サービスまでの一元管理を実現するためにPTCが急速に舵を切っているのが、製品のSaaS(Software as a Service)化である。2021年のServiceMaxも、その提供形態はSaaS。その前後にも、SaaS企業の買収を重ねている。

 2019年には、PLMのSaaSである「Onshape」(旧・米Onshape製)を、2022年には、ALM(Application Lifecycle Management:アプリケーションライフサイクル管理)のSaaSである「Codebeamer」(旧・独Intland Software製)を、それぞれ買収した。

 さらに、同社の主力製品である3D CAD(コンピューターによる設計)ソフトウェアの「Creo」と、PLMソフトウェアの「Windchill」においても、従来のオンプレミス版に代わるSaaSの提供も開始している。まずWindchillのSaaSである「Windchill+(プラス)」を2022年に発表。CreoのSaaS版となる「Creo+(同)」は、今回のLiveWorxでリリースした。

 PTCは、SaaS群の総称として「Atlas」を冠している。Creo+の追加で、PLMを中心としたPTC製品のクラウド上での連携が、よりカバー範囲を広げ、より深まったことになる(図2)。

図2:PTCのSaaSブランド「Atlas」を構成する製品群

 Atlas環境下では、どのような連携の姿を描いているのだろか。例えば、ALMのCodebeamerとPLMのWindchillの連携では、「製品の物理的な構成とデジタルな構成の両方を扱える製品の部品表を実現できる」とヘプルマン氏は話す。「ソフトウェアによって製品能力を高めても、その要求にハードウェア側が耐え切れなくなるといった問題が発生した際の対応に必要になる」(同)という。

 ALMとPLMとの連携を実践する企業の1社が、電動アクチュエーターや制御バルブといった自動化機器を製造する独Festo(フエスト)。同社では、顧客の要求に対しソフトウェアによる修正を加えているが、すべてのニーズに対応するには、必要なソフトウェアが延々と増え続けてしまう。そこで、要件定義、設計、実装、テストといった開発工程をALMで管理したうえで、PLMと連携することで生産や開発に影響するコストを計算する。そこから、どのソフトウェアを、どれくらいの割合で持つかを整理・計画しているという。