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大阪商工会議所の中堅・中小企業のマッチングイベント、対象を欧州発スタートアップに拡大

「MoTTo OSAKA オープンイノベーションフォーラム」より

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年1月6日

大阪商工会議所が、欧州発のスタートアップと中堅・中小企業のマッチングイベントを2024年12月に開催した。2009年から続く大手と中堅・中小のオープンイノベーション(共創)支援活動「MoTTo OSAKAオープンイノベーションフォーラム」の一環だ。海外スタートアップとのマッチングを図るのは、これが初めて。先端技術を活かす新ビジネスの創出を後押しする。

 「MoTTo(もっと)OSAKAオープンイノベーションフォーラム」(以下、Motto大阪)は、大阪商工会議所(以下、大商)が2009年度から取り組むオープンイノベーション(共創)の支援プログラムである。技術やノウハウを持つ大企業や大学・研究機関などと、中堅・中小企業でマッチングを図る。「MoTTo」には、「Mo=ものづくり、T=テクノロジー、To=トッププランナー」と、「もっと=今まで以上に。さらに。いっそう。」に基づく造語で、ものづくり力や技術力を高めたいという決意を込めたという。

 プログラムには、(1)ニーズ主導型の「技術ニーズマッチング」と、(2)シーズ主導型の「技術シーズ商談会」の2つがある。(図1)。前者では、大企業が持つ開発中の技術や製品を中堅・中小企業らに公開し、それらを活用するビジネスや課題に応える提案を募る。後者では大企業や大学が持つ完成済みのデバイスや特許などを活用し、中堅・中小企業らが新しいビジネスや製品を生み出すことを支援する。

図1:MoTTo OSAKAオープンイノベーションフォーラムが展開する2つのマッチングプログラムの概要

欧州発スタットアップの2社がドローンや蓄熱技術を説明

 Motto大阪は次のステップとして、オープンイノベーションの場を海外へ広げようとしている。その第1弾として2024年12月、海外スタートアップが持つ技術や製品を活用するシーズマッチングのためのピッチイベントを初めて開催した。海外スタートアップの選出はSBIホールディングスが協力する。今回は、スイスのFlyability(フライアビリティ) と、ドイツのKraftblock(クラフトブロック) の2社が登壇した。

 Flyabilityは、ローザンヌ連邦工科大学とインテリジェントシステム研究所からスピンオフしたスタートアップで、AI(人工知能)技術を搭載する産業用ドローンを開発する。本社は、多くのドローン開発ベンチャーが集まる“ドローンバレー”にあり、既に日本にも拠点を置いている(写真1)。

写真1:製品について説明するスイスFlyabilityの日本カントリーマネジャーである若槻 航 氏

 同社の産業用ドローン「Eliosシリーズ」は、GPS(全地球測位システム)が使えない屋内や危険区域でも飛ばせる屋内点検用ドローンだ。AI技術により屋内や狭い場所でも周囲を傷つけず飛行できる。LiDARマッピングや、超音波による厚さ計測、放射線の計測などを得意技術とする。機体にはクルマのヘッドライトと同程度の明るさのライトを搭載し、屋内などの暗所でもデータを確実に収集するという。データ解析システムも自社開発している。

 会場でのデモ飛行では、操縦経験がない参加者でもドローンをすぐに飛ばせることを体験した。室内でも問題なく飛行し、ホバリング中の機体を手で押しても同じ位置で飛び続けることも確認できた。

 一方のKraftblockは産業用の蓄熱技術「Thermal energy storage」を開発している(写真2)。CEO(最高経営責任者)兼 共同創業者のMartin Schichtell氏は、「独自開発する蓄熱材を使い、350度から1300度までの熱エネルギーを数分から2週間、貯蔵できる。蓄熱材の85%はリサイクル可能だ」と説明する。独Siemensや三菱パワーを顧客に持ち、日本でも運用例がある。

写真2:Kraftblockの蓄熱技術「Thermal energy storage」はコンテナ型などで提供され、種々の用途に対応できるという