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【CES2025:モビリティ編】大手メーカー不在の展示会場で気を吐く日本勢、自動運転とEVの実用化が加速
自動車に続き農機・建機の自動化や空飛ぶクルマの出展も盛況
スズキは「小・少・軽・短・美」をうたい軽トラを展示
両者のほかに、もう一社、話題になっていたのがスズキである。同社の、ものづくり理念「小・少・軽・短・美」をキーワードに、オーストラリアのスタートアップApplied EVと共同開発する小型車サイズの自動運転電動台車、米Glydwaysと共同開発する小型車両による都市交通システムを展示した。同社は2016年から米シリコンバレーに拠点を置き、起業支援や投資活動を展開してきた。今回の出展目的は、「社会課題の解決に共感できる仲間作り」だという。
ちなみにスズキは軽トラックの「スーパーキャリイ」も展示した(写真4)。米国では右ハンドル車は販売できないが、25年を過ぎた車両は「クラシックカー」として販売されており、中古の軽トラックが近年、人気になっているそうだ。スーパーキャリイ自体はまだクラシックカーの対象ではないが今回、「小・少・軽・短・美」の象徴として展示したという。
中国のEVメーカーZookrも、メーカーらしい出展で存在感を際立たせていた(写真5)。3種の最新モデルと、米Qualcomm Technologiesや米NVIDIAと進めるAI(人工知能)コクピットやインテリジェントドライビングシステムを公開した。展示会前日のプレスカンファレンスで米Appleや米Google、米Microsoft、ソニーなどとグローバルパートナーとして連携していくことも発表した。
ロボットタクシー市場は事業の明暗が明確に
モビリティ分野の出展で主役の座を取ったのはADAS関連の開発会社だ。Qualcommや、米インテル傘下のイスラエルのMobileye、米Amazon.comの子会社Zoox、日本のティアフォーらである。各社は、さまざまなメーカーと協力関係を築き、実用化を急いでいる。そのため展示ブースは技術紹介よりも商談がメインで「招待客のみ」というところも少なくなかった。それだけ実用化が進んでいるということが伺える。
例えばZooxは、既存車両への後付けではなく、ハンドルやアクセルを持たない自動運転専用車両によるMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)の提供を目指している。ラスベガスの中心街での試験運行で高速に走る姿が、たびたび見られた(写真6)。年内のサービス開始を予定しており、2026年のCES開催時には実利用が可能になっているかもしれない。
より実用化が近そうなのがロボットタクシーである。米アルファベット傘下のWaymoや、メガサプライヤーのAptiv(旧Delphi)、NTTグループと協業する米May Mobilityらが出展した。Waymoはすでに米サンフランシスコや米フェニックスで1年以上サービスを提供しており、2025年内には東京で海外展開初となるサービス提供を予定する(写真7)。会場では、さらなるサービス拡大に向けて、使用する車両や運用技術の安全性などを詳しく紹介していた。
一方で、「実用化の壁はまだ高い」と思わせる面もある。Aptivは2018年、配車サービスの米Lyftと組んでラスベガスでサービスを開始したものの、現時点でも正式サービスの開始に至っていない。米テスラの車両を使い専用トンネルで移動する「LVCC Loop」も無人化は進まず、ドライバーが運転している。米GMとホンダが進めていた「Cruise」など、人身事故の影響を引きずり撤退を余儀なくされる例もある。
今後は、技術以外の安全に対する信頼性や社会の受け入れに注力した展示になっていくのかもしれない。