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【CES2025:モビリティ編】大手メーカー不在の展示会場で気を吐く日本勢、自動運転とEVの実用化が加速

自動車に続き農機・建機の自動化や空飛ぶクルマの出展も盛況

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年1月30日

農業や建設の現場で広がる自動運転や自律化

 自動車メーカーに代わって出展が増えたのが、農業や建設現場に向けた車両である。いずれも人手不足に悩む現場にあって、安全に効率良く作業できるよう、衛星通信を使ったリモート運用や自律運転技術、ロボット技術の採用が急速に進んでいる。

 農機・重機メーカーの米John Deereは自動運転や自律化の技術をトラクターやダンプカー、収穫車両、芝刈り機まで幅広く搭載していくことをプレスカンファレンスで発表した(写真8)。同社によれば、北米の農業従事者の平均年齢は58歳以上で、1日に12時間〜18時間働いている。建設業では請負業者の88%が熟練労働者を見つけるのに苦労している。その解決には作業車両の自動運転や自律化が不可欠とした。

写真8:米John Deereは農業や建設の現場を支援する自動運転技術を発表した

 クボタも、作業現場の自律化とロボット化を進めており、さまざまな地形に対応する自動運搬機や収穫作業のための「KATR」を公開した(写真9)。

写真9:クボタは、さまざまなタイプの自動運転車両を公開した

 建機分野では、コマツが月面作業用や水中施工といった特殊な作業車両を展示。創業100周年を迎えた米Caterpillarは、EVや水素ハイブリッド化といったエネルギー面での対応技術を紹介していた。現場で利用するロボットとしては、テスラやNVIDIAも開発を進めている。中国で採用が進む2足歩行型ロボットの提案が増えている印象がある。

空飛ぶクルマのサービスがいよいよ開始

 自動運転車と並んで、いよいよ本格的な実用化が始まりそうだったのが、CESへの初登場時には「不可能だ」と思われていた空飛ぶクルマである。

 米デルタ航空は、ラスベガスの新たなランドマークになった「The Sphere」で基調講演に初めて臨み、トヨタも出資する米Joby Aviationと組んだエアタクシーサービスを2025年内に開始すると発表した(写真10)。ロサンゼルス空港とニューヨークのJFK空港から始め、都心に設ける専用ポートとの間を10分以内で結ぶ。

写真10:デルタ航空は基調講演でエアタクシーサービスの開始を発表した

 そうした動きに後押しされてか、会場では複数の機体が公開された。韓国のSAMBO MOTORs GROUP2人乗りエアタクシー「HAM III-2」や、米Pivotal の一人乗り量産型のeVTOL「HELIX」などだ。HAM III-2は試験飛行を成功させている。HELIXは2025年内の発売を予定する。

 中国XPEG AEROHTは開発する「Land Aircraft Carrier」の具体例として、2024年11月に有人飛行に成功した2人乗りのヘリコプター型eVTOLと、その機体を搭載する6輪EVを展示した(写真11)。同社は、EVメーカーとして急成長する中国XPENG MOTORSの子会社である。

写真11: XEPEG AEROHTは有人飛行に成功し2人乗りeVTOLを展示した。2024年はローター付四輪車を展示していた

 全体的には、順調に実装が進んでいる機体だけが出展されているようだった。そうした中で、コンセプトのみの展示もいくつか見られた。その1つが米SimTech Labsの「Manta M4」。3つの大型ローターを備えた一人乗りeVTOLで、水上から離発着し最高速度時速65マイル(約104km)で飛行できるという。2025年2月に別イベントで実機を発表するという。

 米Invo StationのUFO型の3人乗りEV「V0 Invo Moon」は、プロトタイプの初公開を予定していたものの、ロサンゼルスの山火事によりキャンセルされた。もし発表されていれば最も話題になったのは間違いないだろう。