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【CES2025:デジタルヘルス編】遠隔診断・検査を“いつでも・どこでも”可能にする製品/サービスが主軸に
リング型やメガネ型のウェアラブルデバイスの差異化競争も激化
唾液からストレス状態を測定できるデバイスも
2024年のデジタルヘルス分野では、更年期や女性特有の健康状態を測ったり、女性ホルモンを検査したりというフェムテックがトレンドだった。2025年は、検査対象のさらなる広がりが感じられた。
カナダのスタートアップEliは2024年、唾液から女性ホルモンの1種であるプロゲステロンを検査できるデバイスを発表したが、2025年は同じ方法でストレスの指標になるコルチゾールの検知機能をリリースした。スティック状のツールに付いたパッドを色が変わるまでなめれば、20分後には結果がスマホに表示される(写真5)。
スイスのスタートアップNutrixも、唾液によるコルチゾールを専門ラボレベルでテストする「CortiSense」を開発し、イノベーションアワードを受賞した。2つの特許技術を持ち、ストレスパターンをスマホですぐに確認することで、対策が打てるようになるとする。同社によれば、米国ではストレスによる欠勤などにより年間3000億ドルの損失が生じている。
スマートグラスは音のテキスト化で“見える補聴器”へ
健康状態の可視化では、日常的なモニタリングで体調や健康管理するウェアラブルデバイスが一気に普及しそうな勢いだった。なかでもスマートリングはすでにOURAリングや日本でも2月に発売されるSamsungリングがヒットしており、類似製品が会場のあちこちで見られた(写真6)。
スマートリングは、その見た目だけからは、機能などの違いがほとんど分からない。各社は、連続使用時間や、検知できる生体情報の種類と精度、装着のしやすさやデザインなどで差異化を図ろうとしている。今後は、サブスク型か買い切りかといった販売戦略での競争も激化しそうだ。
同じく多数の出展があったスマートグラスは、AI技術の取り込みにより、アクセシビリティ分野での活用も増えそうだ。例えば米Xanderは、会話を記録し家族と共有するなど認知障害のサポート機能を持つ「XanderGlasses Connect」でイノベーションアワードを受賞した(写真7)。「Vuzix Shield Smart Glasses」をベースに、26言語の翻訳や環境音をキャプション表示できる。同社は前年も、マイクで拾った声をテキスト表示する“見る補聴器”でイノベーションアワードを受賞している。
話し声をテキスト化する機能を持つスマートグラスは多数見られた。ほとんどは見た目が普通のメガネで、スマホと連携しAI検索や翻訳の機能をフリーハンズで利用できる。実際に試していみると、CES会場のような賑やかな場所でも相手の話を可視化できたことから、見る補聴器として打ち出すメーカーも増えそうだ。
使っていることが分からないインビジブルなデザインがカギに
前回、テキスト表示機能を持たず、一般的な補聴器として使えるスマートグラス「Nuance Audio」を発表した伊EssilorLuxotticaは今年、AI技術を使ったノイズ低減と音声強調技術を持つ仏のスタートアップPulse Auditionを買収し、眼の前で見ている相手の声だけを聞こえやすくするタイプをリリースした(写真8)。同社は米Metaのレイバンサングラスも開発している。
聞こえにくさは認知症にもつながっていく。世界的な長寿時代に入り、エイジテックは老いのサポートだけでなく、年齢を重ねても若々しさを維持できるよう、身体機能を拡張する機能が求められ始めている。
WHO(世界保健機構)は2019年、若者を中心に世界で11億人が難聴リスクにさらされていると発表している。聞こえをサポートするヒアラブルデバイスは高齢者だけが対象ではなくなっている。高齢者、若年者共に装着時の見た目も大事になり、使っていることを他者が気づき難いインビジブルなデザインが求められると考えられる。
ヒアラブルに関しては、生体情報を収集したり、睡眠をサポートしたりとヘルスに向けた製品も多数見られた。使用するセンサーやチップ、バッテリーの小型化など、この領域の製品を実現するための周辺技術も出展されており、2026年には具体的な製品として発表されることを期待したい。