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【CES2025:デジタルヘルス編】遠隔診断・検査を“いつでも・どこでも”可能にする製品/サービスが主軸に
リング型やメガネ型のウェアラブルデバイスの差異化競争も激化
世界最大規模の国際テックイベント「CES」では、医療や健康に関するデジタルヘルス関連の展示が増える傾向にある。主催者のCTAも注目分野として扱っている。2025年は、遠隔医療やセルフ予防、ウェアラブル、エイジテックといった分野で実際に“使える”技術の展示が目立っていた。
米ラスベガスで毎年1月に開催される国際テックイベント「CES」では近年、医療や健康をテーマにしたデジタルヘルス分野の出展が増えている。CESを主催するCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)は、注目すべき製品の表彰制度「イノベーションアワード」を実施しているが、全33カテゴリーのうちデジタルヘルス関連ではAI(人工知能)分野に次いで多い49製品が受賞した。エイジテックとアクセシビリティを含めれば65製品。AI分野での受賞にもデジタルヘルス関連が目に付いた。
CESでのデジタルヘルス関連の展示は当初、フィットネスやジム、スポーツ向けが中心だった。そこから体温や心拍、睡眠、メンタルなどをセンシングし、健康状態を可視化/ケアするためのツールやサービスに発展。コロナ禍以降は、遠隔医療やスマートフォン用アプリケーションで治療するデジタルセラピューティクス、医療現場で用いる診療・手術のための専門機器も出展されている。
遠隔診断が“いつでも・どこでも”可能に
そして2025年は、映像と通信技術を使ったデジタルヘルス関連の製品/サービスが多数見られた。特に目に付いたのが、規制緩和などを背景に、遠隔診断が“いつでも・どこでも”患者自身がセルフで手軽に受けられる製品/サービスである。
その1つが、米OnMedが開発する遠隔医療キオスクの「OnMed CareStation」だ(写真1)。特許取得済みのボックス中に、大型ディスプレイと高精細カメラ、デジタル聴診器などを配置し、その中で利用者は診断ツールと専門家によるハイブリッドケアが1対1で受けられる。室内はUVライトとエアフィルターで清潔さを保っている。
OnMed CareStationは、電源があれば学校や公共施設、駅、空港など、どこにでも設置できる。機能自体は、JR東日本が東京都内の駅構内で展開する「スマート健康ステーション」と似ている。だがOnMedが目指すの「医療サービスが行き届かない地域への提供と診療費の低減だ」という。
遠隔診断を自宅でセルフ化するスマートミラーも登場した。イノベーションアワードを受賞した台湾のFaceHeartが開発する「FaceHeart CardioMirror」が、その1つ。AI技術とエッジコンピューティングにより、鏡を45秒見れば体温や心拍数、血圧、呼吸数が計測でき、病気の予兆やストレス指数も表示する。
仏Withingsの全身ミラー「OMNIA」は身体全体を360度測定し、より多くの生体情報をセンシングする(写真2)。同社が発売するスマートウォッチやスリープテック機器と組み合わせることで、日々のコンディションを示す詳細データを取得・表示する。コンセプト段階だが「実用化の際には遠隔医療にも対応する」としている。
スマートミラーは数年前も話題になった。当時は主に美容アドバイスや、そのための商品を、その場で購入できるといった機能を打ち出していた。その用途をヘルスケア/遠隔診断に振ったことで、スマートホームの浸透とも相まって、同様の製品が今後も増えそうだ。
韓国の医療用研究開発会社MVITROは、糖尿病を管理するためのデバイス「ORTIV」を出展した(写真3)。タバコ大のデバイスは、針を使わずレーザーで血糖値を測定し、結果をすぐに印字する。従来の検査の70%を簡素化し、いつでも・どこでも検査ができる。ハンディタイプや足に巻いて測定できる機器も開発している。
在宅医療サービス会社の米Prarは、卓上型デバイス「Ausa Intelligence」のモックアップを展示した(写真4)。搭載するセンサーやアタッチメントを取り換えることで、血圧から血糖値、耳鼻科の診療など、さまざまな検査ができる。同デバイスを介して遠隔地にいる医師の診断も受けられる。家庭や介護施設などへの導入を目指すという。