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自律型AIの調和が「エクスペリエンス・エコノミー」を実現する【前編】

米Genesys「Xperience 2025」より、CEOのトニー・ベイツ氏

青山 祐輔(ITジャーナリスト)
2025年10月27日

 AIオーケストレ-ションによって実現されるエクスペリエンスのオーケストレーションについてGenesysは、その成熟度を次の6段階に分ける(写真2)。

写真2:Genesysが定めるエクスペリエンス・オーケストレーションの成熟度。

レベル0 :完全な手作業
レベル1 :音声認識による簡単な操作
レベル2 :ボットとオムニチャネルの自動化
レベル3 :生成AI技術の実用化
レベル4 :AIが半自律的に行動
レベル5 :オーケストレーションの完全な自律化

 Genesysのクラウド環境では「現時点ではレベル4を実現できている。もちろん人間による監視は必要だが、AIが計画を立てて適応し、状況をリアルタイムで推論できる」とベイツ氏は話す。将来のレベル5では「AI自体が成果を追求するようになり、AIが自ら計画を立て、自ら行動し、ビジネス全体、システム全体で連携する」(同)とする。

エクスペリエンス・エコノミーに向け企業は根本的な変化を求められる

 今後のエクスペリエンス・エコノミーに対応するために企業に求められる根本的な変化としてベイツ氏は、次の4つを挙げる。

変化1 :アプリケーションからエクスペリエンスへのシフト。顧客が求める体験は、アプリという点のソリューションの中にあるのではなく、カスタマージャーニー全体を通して存在する

変化2 :指標から成果への移行。顧客サポートにおける処理時間や初回解決率といった従来のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は単なるプロセスにおける効率性を示すだけで、顧客の体験の質を語っていない。ロイヤルティこそがビジネスを築く。ロイヤルティのリターンは効率のリターンよりもはるかに大きい

変化3 :ツールからチームメイトへ。AI技術を単なる機能の付け足しではなく、信頼できる同僚として捉える必要がある。AIは“眠らない”チームメイトであり、状況を決して見失うことはない。常に次の最善の行動を探し人のために準備している

変化4 :ポイントソリューションからプラットフォームへの移行。AI技術を利用した成果は独立したツールから生まれるのではなく、連携して機能するシステムから生まれる

 「複合的な要素やシステムを連携し、調和させ、目的を最大限に達成することがオーケストレーションの本質だ。AIオーケストレーションなくして、エクスペリエンス・エコノミーの到来には立ち向かえない」とベイツ氏は強調する。

 その上でベイツ氏は「当社は毎月20億件以上のリアルタイムあるいは、ほぼリアルタイムな会話を処理している。これほど多くのリアルタイムデータを持つ企業は他にない。コンタクトセンター用SaaS大手として培ってきたバックグランドに加え今後は、エージェンティックAIや、AIと人間のチームワーク、企業の業務に変革をもたらすエコシステムが当社の強みになっていく」と改めて力を込めた。