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自律型AIの調和が「エクスペリエンス・エコノミー」を実現する【後編】
米Genesys「Xperience 2025」から、CPOのオリヴィエ・ジューヴ氏
コンタクトセンター向けSaaS(Software as a Service)を提供する米Genesysが自立的に動作する「エージェンティックAI」によるCX(Customer Experience:顧客体験)の変革に力を入れている。前編では主に、その概念を紹介した。後編ではGenesysの具体的な取り組みについて、同社が米ナッシュビルで開いた年次イベント「Xperience 2025」(2025年9月8日~10日)におけるCPO(最高製品責任者)のオリヴィエ・ジューヴ(Olivier Jouve)氏の講演から紹介する。
「エージェンティックAI(人工知能)による『エクスペリエンス・エコノミー』の到来は過去最大の変革だ。これまでのツールを全て捨て去り、エージェンティックAIを使う準備はできているだろうか?Genesysはできている」--。米Genesys CPO(最高製品責任者)のオリヴィエ・ジューヴ(Olivier Jouve)氏は、挑発的に問いかける(写真1)。
Genesysはこれまでに「Genesys Cloud AI Guides」というAI基盤と、その上で動作するAIエージェントの「Virtual Agent」、およびコンタクトセンターのオペレーターを補佐する「Copilot」を提供してきた。
そのうえでジューブ氏がいう“準備”とは、これらのAI環境の強化に加えて、他社のAIエージェントと連携する「A to A(Agent to Agent)コラボレーション」や、外部システムと連携する「MCP(Model Context Protocol)」のサポートを指す。これらにより「利用企業は、より高度なCX(Customer Experience:顧客体験)を提供できるようになる」(ジューブ氏)とする。
ジューブ氏は「エージェンティックAIによる革命は、単なる次のステップではない。地殻変動的であり、クラウドへの移行時よりも、もさらに変革的なものだ」と強調する。クラウドがアクセシビリティ(利用しやすさ)とスケーラビリティ(拡張性)を提供したのに対し「エージェンティックAIは、リアルタイムでインテリジェントな組織を、より大規模に実現する」(同)という。
導入企業が既に測定可能な結果を出している
ジューブ氏の自信の背景にあるのは「技術的な理想論ではなく、顧客企業において既に稼働し、測定可能な結果を出している」ことだ。同氏は、エージェンティックAIが実現する4つの機能、すなわち(1)自動化、(2)拡張、(3)パーソナライゼーション、(3)最適化のそれぞれに対し具体的な数字を挙げる。
(1)自動化 :Virtual Agentの利用は前年比121%で成長し、2025年第2四半期には6億2300万件に達している
(2)拡張 :Copilotが前年比490%成長となる月間1760万件の自動要約を生成した
(3)パーソナライゼーション :2025年第2四半期だけで6500年分以上の音声通話を文字起こしした
(4)最適化 :顧客の18%以上がカスタマージャーニーを最適化する「Journey Flow」を使用している
これらの数値についてジューブ氏は「当社のAI技術が実験段階ではなく、大規模な本番環境で稼働し、顧客企業に受け入れられていることを意味する」と語る。
いくつかの事例も挙げる。その1つがスポーツ専門チャンネルである米ESPNでの取り組みだ。同社では「会話型セールスを20%増やし、解約を約13%削減した。顧客満足度スコアが5点満点で3.85から4.2近くにまで向上した」(ジューブ氏)という。
またカナダの小売チェーンであるBest Buy Canadaでは「Virtual Agentが通話の60%を処理し、運用コストを20%削減できた。オペレーターの満足度も高まり離職率を下げられた」(ジューブ氏)とする。
