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自律型AIの調和が「エクスペリエンス・エコノミー」を実現する【後編】

米Genesys「Xperience 2025」から、CPOのオリヴィエ・ジューヴ氏

青山 祐輔(ITジャーナリスト)
2025年10月28日

社会実装に向けたAI利用の倫理的課題にも3層のフレームワークで対応

 一方で「社会のなかでAIを用いることには慎重さも求められる」(ジューブ氏)。実際、国レベルから企業単位まで、さまざまなレベルでAIに関する倫理規定や透明性確保に向けた枠組みが定められている。

 ジューブ氏は「ビジネスシーンにおいて、そうしたAI利用への配慮を欠くことは致命的な事態を招きかねない」と指摘する。Genesysでは「その点を意識した設計になっている」(同)とする。

 例えば、Genesys Cloud AI Guidesは、アクション、インテリジェンス、トラストの3層構造のフレームワークからなっており「アクション層で推論と計画を実行し、インテリジェンス層で意思決定ロジックを強化し、トラスト層で透明性とビジネスとの整合性を保つ責任とを保証する」(ジューブ氏)。ほかにも、リアルタイム監視や監査ログ、人間による上書き、安全な学習フィードバックループなどの機能を用意する(写真2)。

写真2:Genesys Cloud AI Guidesは3層構造のフレームワークからなっている

SalesforceとServiceNowの投資を受けGenesys外との連携を加速

 Xperience 2025でGenesysは、ビジネスアプリ系クラウド大手の米Salesforceと米ServiceNowから合計15億ドル(225億円。1ドル150円換算)の投資を受けたと発表した。

 特にServiceNowとは、AIエージェントの連携標準である「Agent2Agentプロトコル(A2A)」を用いた「A2Aオーケストレーション」を共同で提供し、GenesysのフロントオフィスシステムとServiceNowのバックオフィスシステムの間でのオーケストレーションを可能にする。

 そこでは「エージェント同士が、どのように連携するかをプログラムする必要ない」とジューブ氏は説明する。「A2AとMCPという標準プロトコルを採用することで、ベンダーやフレームワークを超えた相互運用性を実現している」(同)という。

 利用可能なAIモデルについても、Genesys独自のモデルに加え、大手ITベンダーが提供するモデルやオープンソースのモデルなどを組み合わせられる。「2025年内には利用企業が独自モデルを持ち込むことも可能になる」とジューブ氏は話す。

 こうしたAI技術の開発に向けてGenesysは「350人以上のAI実務者チームを置き、3万5000以上のモデルを本番環境で実行している」とジューブ氏は説明する。「利用企業の半数以上が、少なくとも1つ以上のGenesisのAI機能を使用している」(同)とする。

 ジューブ氏が挙げた稼働状況や、測定可能な成果、具体的な顧客名などは、Genesysが取り組むAI技術が実験段階を終えて実用段階に達していることを示している。AIの利用方法や可能性をPoC(Proof of Concept:概念実証)により模索するだけの段階は過ぎた。

 今後、AI技術は中核業務に組み込まれ、ブランド価値や顧客のロイヤリティの向上、従業員の離職率の低下など、企業の業績に直接寄与する時期が訪れつつあるようだ。