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設備アセット単位のCO2排出量を可視化するAIアプリ、スウェーデンのIFSが提供

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集長)
2026年6月4日

ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)のクラウドサービスなどを手掛けるスウェーデンのIFSが、産業用AI(人工知能)を使う業務特化型アプリケーションの開発で、エージェンティック(自律型)AIの適用を進める。同社イベント「IFS Connect Japan」(2026年5月27日)での記者発表会にCEO(最高経営責任者)らのグローバル幹部が登壇し、開発の現況と新たなCO2(二酸化炭素)排出量管理アプリを発表した。

 「日本は、工場や設備に大きく投資した『資産(アセット)集約型産業』が中心で、既に何十年もの間に積み上げてきたインフラがある。私たちはレガシーシステムを生かしながら連携できるAI(人工知能)アプリケーションを開発し、企業個別の環境に応じてデータを追跡できる手法を整備していく」--。ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)のクラウドサービスなどを手掛けるスウェーデンのIFSでCEO(最高経営責任者)を務めるマーク・モファット(Mark Moffat)氏は、こう強調する(写真1)。

写真1:スウェーデンのIFS CEO(最高経営責任者)のマーク・モファット氏(中央左)。モファット氏の左は順に、グローバルCPO(最高製品責任者)のダニエル・ダットン氏とCSO(最高サステナビリティ責任者)のソフィー・グラハム氏。右は、中東アジア地域担当プレジデント ハンネス・リーベ氏。リーベ氏の左は順に、日本法人 代表取締役社長の大熊 裕幸 氏、日本IBM 常務執行役員 コンサルティング事業本部の山之口 裕一氏

 IFSは、産業用AI「IFS.ai」の基盤上で、組み込み型のAIアプリを開発している。製品戦略においては、ERPからEAM(Enterprise Asset Management:企業アセット管理)、FSM(Field Service Management:フィールドサービス管理)までを対象に、業務に特化したエージェンティック(自律型)AIの適用を進める(図1)。

図1:IFSは産業用AI基盤「IFS.ai」上で、業界特化型のアプリケーションを提供する

 同社 グローバルCPO(最高製品責任者)のダニエル・ダットン(Daniel Dutton)氏は「これまでも、現場で働く人を支援するアプリケーションを提供してきた。これを土台に今後は、AIエージェントのような『デジタルワーカー』が業務を担えるよう“AIファースト”のアプリケーション開発を進める」と話す。

IoTデータ連携でアセットごとの排出量を可視化する

 直近、開発したのがCO2(二酸化炭素)排出量管理アプリ「IFS.Zero」だ。企業がエネルギーコストの上昇や厳格化する開示要件などに直面する中で、アセット単位でのエネルギー使用量と排出量を可視化し、全社的なサステナビリティ報告と排出量削減につなげられるとする。

 IFS CSO(最高サステナビリティ責任者)のソフィー・グラハム(Sophie Graham)氏は「アセット集約型企業の現場においては、オペレーション(運用)の不備から事象の把握が遅れてきた」と話す。

 そこでは「どの設備やどの機械がどれだけのエネルギーを使い、消費が急上昇しているかを捉えられていなかった」(同)と話す。結果「会社全体で排出量を管理しているのではなく、事後報告となっているのが現状で、問題が発生しても場合によっては四半期末などに判明することもある」(同)

 排出量管理のためにIFS.Zeroでは、データを対象となるアセットのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーからリアルタイムに収集する。グラハム氏は「電力消費量やCO2の排出量がどのアセットに起因するのかというトレーサビリティ(追跡可能性)を確保できるようにする」と説明する。

 製造ラインなどの環境で「監査にすぐ対応できる形でのオペレーションを進められる」とグラハム氏。収集したデータを元に「排出量のコントロールなどの具体的なアクションを取れるほか、設備の異常検知や予防保守にも役立てられる」(同)という。

経済安保や規制リスクなどの不確実性に対応できる協業を強化

 IFS 中東アジア地域担当プレジデント ハンネス・リーベ(Hannes Liebe)氏は「日本は世界の製造業を牽引するパワーハウス(主要拠点)だ。長期的な視野に立って成果重視で物事を考え、顧客起点でプロジェクトを進められる点で、IFSの理念と共通している」と日本市場に期待を寄せる。実際、日本を戦略的投資を執行する3大市場の1つに位置付ける。

 国内での代表的な実績として、新明和工業、JVCケンウッド、ホシザキらで産業向け業務クラウド「IFS Cloud」が導入されている。各社とも製造、エンジニアリング、サプライチェーンといったオペレーションの一連を標準化し、エンドツーエンドでの統制を強化する中で「後ろ10年を見据えたAI機能の本格活用に向けた基盤構築を急いでいる」(リーベ氏)とする。

 国内の有力パートナーとの協業も深化する。同社日本法人 代表取締役社長の大熊 裕幸 氏は「単にソフトウェアの共同販売に留まらず、昨今の経済安全保障や規制リスクに対応するためのパートナーシップ戦略を敷いている」とする。

 その一例が日本電気(NEC)との協業で「データソブリン(Data Sovereignty:データ主権)の確保を目的としている」(大熊氏)という。協業を通じては「データの処理、バックアップ、再利用などを国内で完結させ、日本の法規制の中で安全に運用できる基盤を作る」(同)考えだ。

 日本IBMとの協業も強化する。日本IBM 常務執行役員 コンサルティング事業本部 製造・流通・公益・統括サービス事業部担当の山之口 裕一 氏は「IFSの持つ産業用AIとクラウド基盤に、IBMが持つAI駆動型の開発支援ツールとコンサルティングの知見を組み合わせて製造業を支援していく」と意気込む。