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【COMPUTEX 2026:ロボティクス編】「現場適応型」ロボットで存在感示す台湾、フィジカルAIで米半導体大手と連携

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2026年8月24日

「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日、台湾・台北)では「AIロボティクスゾーン」が新設された。人型ロボット(ヒューマノイド)開発競争が加熱する中、台湾は実用性を重視した「現場適応型」のアプローチを打ち出している。米NVIDIAや米Intelなど半導体大手との連携を深めつつも、製造現場や医療現場を中心にフィジカルAI(人工知能)ロボットの実用化に挑む。

 フィジカルAI(人工知能)の登場によって、ロボティクス産業は従来の単なる自動化から大きく転換している。環境の変化を認識し、それに応じて自ら考え、自律するマシンへと進化しているのだ。

 世界的には二足歩行で動き回る人型ロボット(ヒューマノイド)を中心とした開発競争が注目を集める一方で、台湾は必ずしも二足歩行にこだわらないアプローチを採る。製造業を中心に、店舗や医療施設、公共スペースといった現場に適応し、適切に活用できるかという実用性を重視している印象がある。

現場に適応するためのロボットやサービスを開発

 「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日、台湾・台北)でその現状を象徴する展示は、7年ぶりに復活した台北世界貿易センター(TWTC)の第1展示ホールに新設された「AIロボティクスゾーン」で明らかになった。出展は台湾メーカーが中心だが、日本やグローバルでビジネスを展開する企業も多い。そこではただロボットを見せるのではなく、実際の使用シーンを想定して具体的なユースケースまでを紹介している点が興味深い。

 例えば台湾のNUWA Robotics(ヌワ・ロボディクス)は、店頭や医療機関の院内、バックヤードで活躍するコミュニケーションロボットを展示していた。展開するサイズやデザインにもバリエーションがあり、顧客のビジネスに合わせたサービス提供の重視をアピールする。

 同社は2016年に設立され、精密制御のためのAIサーボモーターをはじめとするハードウェアと、ソフトウェアの開発から量産、コンテンツ開発までを一貫して手掛ける。AIスマートロボット「Kebbi Air」や、コミュニケーションロボットの「Collibot」は日本でも発売されている。

 ほかに、今年設立したAIロボットスタートアップ・EverMira(エルベミラ) AI Techは、フラッグシップロボット「Odin(オーディン)」と自動コーヒーマシンを統合した「スマートリテールキャビン」を出展した(写真1)。

写真1:EverMira AI Techの「スマートリテールキャビン」はAIロボットと小売店舗が一体化

 ODinは身長173センチメートル、体重85キログラムと人に近いサイズで、片手で最大5キログラム、総積載量10キログラムの荷物を扱う器用なアームを備えている。顧客のオーダーに応じて棚から該当商品を取り出したり、ドリンクを提供したりする。キャビンはコンパクトな設計で、24時間365日営業の無人店舗を容易に設置できるとする。

半導体大手が現場適応型ロボット開発を主導する

 フィジカルAIを組み込んだAIロボットの実現には、従来よりも複雑で緻密な動きに対応するために、高性能かつ処理能力の高い半導体が必要となる。ここでも米NVIDIA、米Intel、米Qualcomm(クアルコム)が開発競争を繰り広げている。

 AIロボティクスゾーンの展示では、NVIDIAとパートナーを組むメーカーが多く見られた。前述したEverMira AI Techもその1つ。NVIDIAは中国Unitreeと共同開発した二足歩行ロボットを発表しているが、今後は台湾製ロボットが増える可能性が高まっている。

 二足歩行ロボットの開発では、3Dビジョン(3次元の立体画像認識)システムとAI技術を組み合わせた工業用ロボットシステムの開発を手掛ける台湾SOLOMON Technologyが、人型ロボット「Super Vision」をNVIDIAと共同開発している。

 自然言語のコマンドによるタスク実行と自律移動を両立し、3Dビジョン技術の活用により精密な検査ワークフローを実現するなど、SOLOMON Technologyは種々のユースケースについてライブデモンストレーションを実施した。

 対するIntelもフィジカルAI分野への投資は積極的だ。実際に基調講演では同社製CPUに最適化された業界初のオープンソース・フレームワーク「OpenVINO PhysicalAI」と開発ツール「Physical AI Studio」を発表している(写真2)。

写真2:Intelの「OpenVINO PhysicalAI」はCPU搭載ロボット間でのコード再利用などを実現する

 OpenVINO PhysicalAIの事例としては、Sensory AIが開発したプロジェクト「Ella(エラ)」が紹介された。Ellaは、(1)顧客対応のフロントに立つ「アバター」、(2)システム運用を支援する「ガーディアン」、(3)店舗を分析する「Ellaエージェント」の3つのAIエージェントが単一のSoC(System on a Chip)上で同時に動作する。これらを組み合わせるロボットコーヒーマシンが、来場者の人気を集めていた。

 またQualcommが提携しているのが、直動機器世界大手の台湾HIWIN(ハイウィン)だ。台湾本社のほかに日本・神戸および世界12カ国に拠点があり、半導体および製造装置メーカーへの納入実績を積み上げている。Qualcommとは、AI半導体や次世代チップの製造で注目されるPLP(Panel Level Packaging)デバイス開発などを共同で進め、エッジ(端末側)AIの活用拡大を目指している。

 展示で目を引いていた双腕8軸ロボットは全長が2.5メートルあり、物流業界での商品スキャンや空港での手荷物処理といった用途に利用できるという(写真3)。他にもAI搭載の物流ロボットや、台湾工業技術研究院(ITRI)と共同開発したグリッパー(把持装置)などが紹介された。HIWIN 会長の卓 文恒(Cho Wen-heng)氏は「AIロボットは3年以内に普及する」とコメントしている。

写真3:HIWINの双腕8軸ロボットは大型だが実務的な用途を想定している