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【COMPUTEX 2026:Arm編】チップ自社製造で鍵を握る台湾サプライチェーン、米Armが連携を強調

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2026年8月4日

半導体設計を手掛ける英Arm(アーム)は、来るべきエージェントAI(人工知能)時代を見据えた新製品や、初となるAIデータセンター向けチップ製造など積極的な事業展開を進める。「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日、台湾・台北)の初日基調講演にCEO(最高経営責任者)のレネ・ハース(Rene Haas)氏が登壇し、一連の挑戦を支える台湾サプライチェーンとの連携を強く印象付けた。

 半導体設計大手の英Arm(アーム)は、自社でチップを直接製造せず、設計したチップのIP(Intellectual Property:知的財産)ライセンスを供与するビジネスモデルで世界のトップ企業へと成長してきた。その顧客は、米Appleや米Tesla、中国スマートフォンメーカーから米NASA(アメリカ航空宇宙局)まで幅広い。

 「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日、台湾・台北)にて、Armが講演直前のビデオには、これまで関係を結んできたメーカーや製品群が紹介された(写真1)。

写真1:Armベースのチップを搭載した歴代製品には米Teslaなどがある

 同社は2026年3月24日、自社イベント「Arm Everywhere」(米サンフランシスコ)において「AI(人工知能)データセンター向けの新しいチップを自社製品で製造する」と発表し、業界を驚かせた。同社のアイデンティティを揺るがしそうなビジネスモデルの転換に対しては「本当に実現できるのか」と危ぶむ声も上がった。

 その不安を払拭するように、およそ2カ月後、COMPUTEX会場から離れたホテルで開催された基調講演に登壇した英Arm CEO(最高経営責任者)のレネ・ハース(Rene Haas)氏は「3月に発表したエージェンティックAI専用チップ『Arm AGI CPU』が(半導体製造大手の)台湾TSMCで順調に製造が進んでいる」現況を改めて紹介した(写真2)。

写真2:英Arm CEO(最高経営責任者)のレネ・ハース(Rene Haas)氏

 現在、AI関連製品の製造は台湾の強力なサプライチェーンに支えられている。実際、米NVIDIAや米Qualcomm(クアルコム)といった半導体大手も台湾にリソースを集中しており、製造キャパシティの奪い合いは激化している。

 製造分野では新参者となるArmだが「1990年創業当時から台湾との連携を作り上げ、これまでにパートナーと共に製造してきたチップ数は約2500億個に上る」とハース氏は説明する。今回の自社製造への挑戦も「台湾の強力なサプライチェーンとの長年の協力関係があるからこそ実現できた」(同)とし「台湾パートナーの皆さんがいなければ今のArmは存在し得ない」(同)と繰り返し感謝も示した。

エージェントAI普及を見据えてNVIDIAとWindows OS市場を開拓

 さらに、Armはもう1つの挑戦をしている。“インテル(Intel)入ってる”が長年定着するWindows OS市場において「Windows on Arm」の開拓を推し進めてきた。

 これまでは主にQualcommと手を組んできた。だが今後、エージェントAIの普及を好機とみなし、パーソナルな環境で高い処理性能を発揮しながらAI技術を利用できるWindows on Arm搭載マシンを実現するべく、NVIDIAと協力して専用チップ「NVIDIA RTX Spark」を開発したと発表した。

 台湾MediaTekのSoC(System on a Chip:統合型半導体)「NX1」を搭載し、NVIDIAのGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)とArmのCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)を統合したスーパーチップの開発では、2年前の「COMPUTEX 2024」でNVIDIA、MediaTekとの3社タッグの協業が発表されていた。当初予想されていた翌2025年での発表は見送られたが、今回ようやく正式発表に至った。

 NVIDIA RTX Sparkは、ノートパソコンやデスクトップPC、ミニPC向けに設計されている。発表の遅れを取り戻すかのように、会場では2026年秋頃の発売を予定しているASUS(エイスース)や Acer(エイサー)、GIGABYTE(ギガバイト)といった台湾各社がサンプルマシンを公開し、来場者の注目を集めていた。

 製品化に向けては米Microsoftも正式に協力しており、誕生から40周年を迎えるWindows PCを再発明する製品になると言われている。会場では唯一アプリケーションが動作する状態で「Surface Laptop Ultra」が展示された(写真3)。

写真3:スーパーチップを搭載したWindowsマシンは2026年秋頃からの発売が予定されている。写真はMicrosoftの「Surface Laptop Ultra」

 さらにハース氏は、新しいマシンの処理性能をアピールするべく、自らが登場するプロモーションビデオ(写真4)を生成AI技術で製作して見せた。

写真4:ハース氏が登場するプロモーションビデオはユーモアあふれる内容で会場の笑いを誘った