• News
  • 共通

【COMPUTEX 2026:ロボティクス編】「現場適応型」ロボットで存在感示す台湾、フィジカルAIで米半導体大手と連携

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2026年8月24日

AIロボットが世界の製造工場を支える

 台湾でAIロボットの開発が急速に進む理由の1つに、世界のサプライチェーンを支える製造工場での実用的なニーズがある。世界中の電子機器メーカーから次々と入るオーダーに対応するため、EMS(Electronics Manufacturing Services:電子機器の製造受託)企業は、人の作業をロボットに学習させることで製造工程を効率化し、大量生産体制を確立している。

 EMSトップの鴻海(FOXCONN)は、デジタルツインやAIロボットをいち早く採り入れてきたことで知られている。メイン展示会場TICC(台北国際コンベンションセンター)内のブースでは、工場内で実際に作業する人型ロボットのデモを披露した(写真4)。

写真4:鴻海は生産工場に合わせて人型ロボットを適応してきた

 デモの注目点は、ロボットが動作経験を通じて環境との相互作用を学習し、適応を高めるEmbodied AI(エンボディードAI)を用いていることだ。現段階ではロボットの基本操作を人間がコントロールして学ばせるが、それも今後はフィジカルAIの進化で自動学習の比率が高まる可能性がある。

 ちなみに、NVIDIAが同時開催した開発者向けイベント「NVIDIA GTC Taipei」のデモエリアでは、人の作業工程を録画した動画からロボットが作業を学習するシステムが紹介された(写真5)。

写真5:人の作業工程を録画した動画データからロボットが作業方法を学習するシステムの開発中画面

 動画を使い回すことで、ロボットを1台1台学習させるよりも訓練時間が大幅に短縮される。また、最も技量に優れた教師データを採用することで学習精度も高まる。緻密な作業への対応はまだ時間がかかるが、反復可能な大量作業への適用に効果的だとしている。

 デモエリアでは他にも、台湾Techman Roboが、カメラを内蔵したアームロボットと人型ロボットが協動して、棚から道具を選んで製品を組み立てる一連の流れを実現するデモを実施した(写真6)。また、韓RLWRLDは5本指の機構を使って、ベルトコンベアーで流れてきた箱に商品を詰め込むデモを公開した。

写真6:Techman Roboはカメラを搭載したアームロボットと人型ロボットが協働するシステムを展示

医療現場では人手不足を補うAIロボットが稼働開始

 製造現場に続き、医療現場でもAIロボットの活躍が進む。カルテや医療器具を搬送するロボットは日本でも導入が始まっているが、台湾では一歩進み、病院業務全体の変革を目指す「スマートホスピタル」構想の下、医療従事者の業務を補助するAIロボットの稼働が本格化している。

 鴻海は、病院環境全体において医療従事者と連携する「フィジカルAIヘルスケアビジョン」を発表している。その実現に向けては、川崎重工業と共同開発する看護師補助ロボット「Nurabot(ヌーラボット)」を展示(写真7)。導入前のシミュレーションから、実際の臨床環境へと移行させる方法を具体的に紹介した。同じく川崎重工業らと共同開発する手術室看護師協働ロボットも展示した。

写真7:鴻海と川崎重工業が共同開発した看護師補助ロボット「Nurabot」

 台湾は医療業界向けコンピューターの開発も得意としており、デジタルデバイスも含めて世界的に要求水準が高い日本の医療現場でも広く使われている。医療現場の人手不足は世界共通の課題であり、AIロボットの市場拡大の潜在性は高いと言えそうだ。