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自社の“プロジェクト”を理解するAIが、設計から製造・施工、運用までを束ねる【前編】

「Autodesk University 2026」より

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集長)
2026年10月22日

Autodesk Assistant Builder:自社AIとAutodeskのAIを連携させる

 Autodesk Assistant Builderは、顧客やパートナー企業が構築したAIエージェントをAutodesk Assistantに組み込む仕組みだ。アラス氏は「実際の仕事は単一のシステムの中だけで完結しない。企業のAI、パートナーのAI、そしてAutodeskのAIが、すべてAutodesk Assistantの中で連携できるようにする」と説明する。

 エンジニアリング大手の仏Arteliaは、自社の過去案件のコストデータと、建材の製造から施工までに排出されるCO2(二酸化炭素)である「埋め込み炭素」を算出する外部サービスを、Revit内でAutodesk Assistantに接続。鉄骨柱を木材(Glulam)に替える案で炭素排出量とコストを比べ、最終的な判断はプロジェクトチームが下した(図2)。

図2:構造部材の材質・寸法変更に伴うCO2排出量の変化を算出する画面例

 従来、炭素排出量は外部サービスが、プロジェクト履歴はArteliaが、モデルはAutodeskが把握しており、データの持ち主はそれぞれ異なっていた。アラス氏は「どれか1社だけでは、この問いに答えられなかった。複数のシステムをまたいで数週間かかっていた作業を1つのワークフローで済ませられるまでになっている」と説明する。

Autodesk AI Orchestrator:AIモデルの使い分けを肩代わりする

 Autodesk AI Orchestratorは、Autodeskのモデルと他社の最先端モデルを継続的に評価し、ワークフローごとに精度、速度、コストの面で最適なモデルへ処理を振り分ける。

 アラス氏は「建具表や材料、部材間の関係といった業界特有のデータを扱う作業には、速度、精度、コスト、専門性のそれぞれに最適化したモデルが要る」と話す。「AIモデルを取り巻く状況は毎日のように変わり、あらゆる仕事に最適な単一のモデルは存在しない」(同)ため、適切なタスクに適切なコストのモデルを組み合わせる。

 アナグノスト氏は「エージェンティック体験の最大の可能性は、製品や組織の枠を超えて広がる点にある」とみる。これら3つの機能を実現したAutodesk Assistantについても「製品内のAIアシスタントや、皆さんが頼りにしているツールを置き換えることを強いるつもりはない」(同)と強調する。

 デモでは、施主から「賃貸面積を増やすため、南側の壁を3フィート(約0.9メートル)外に動かしたい」との変更依頼が届いた場面を想定し、プロジェクトマネージャー(PM)、建築家、設計エンジニアの3人が協働した。

 まず、PMがAutodesk Assistantに工程への影響を尋ねると、遅れが生じる工程を示した工程表が返ってくる。続いて、建築家が同じAutodesk Assistantで住戸の間取りを生成し直し、設計エンジニアは過去に設計した部材を探し出して寸法を合わせた。

 3人は職種や使う製品も異なっているが、製品を切り替えずに1つの変更へ対処した。アナグノスト氏は「人々は解決したい課題に集中し切っており、そのためにどの製品のどの機能を使うべきかまでを見極めようとはしていなかった。最適なモデルの選択で、数週間かかっていた議論が、たった一度の話し合いかつ数分で済むだろう」と話す。

運用・保守の知見を設計に戻し、ライフサイクルを循環させる

 アナグノスト氏は、3業界に加えて運用(Operation)領域に対しての投資拡大も明確にする。「(ライフサイクル全体で見れば)最大の価値の源泉の1つは、資産を設計し製造することだけではない。それらが数年、時には数十年にわたってどう運用されるかにある」(同)からだ。

 2日目の基調講演に登壇した運用事業統括 SVP(シニア・バイス・プレジデント)のステフェン・フーパー(Stephen Hooper)氏は「未来は、設計、製造、運用を個別に改善することではなく、絶え間なく流れる情報の中でそれらをつなぎ、人とAI技術がより良い判断を下すためのコンテキストを生み出すことにある」と強調する(写真3)。

写真3:米Autodesk 運用事業統括 SVP(シニア・バイス・プレジデント)のステフェン・フーパー(Stephen Hooper)氏

 その実現に向けては(1)業界の融合、(2)デジタルとフィジカルの融合、(3)ライフサイクルの融合、の3つがあるとする。

業界の融合

 業界の融合は、各業界のデータを1つのデジタルツインに統合する考え方だ。フーパー氏は「工場も空港も病院も、製造された製品で満たされた建物だ。なぜそのデータを別々に管理しなければならないのか」と問い掛ける。

 建設と製造の融合に対してAutodeskは、3Dモデルを軽量・最適に変換するFormaのモデル調整サービスと、デジタルツイン基盤「Autodesk Tandem」との連携を発表した。これにより、建物のBIMデータと、設備メーカーが作成した機器の製造データを同じプロジェクトに取り込み、運用のためのデジタルツインの土台にできるようにする。

 一方、整ったデータを持たない既存施設(ブラウンフィールド)への対応も示す。デモでは、築30年以上でデータが整っていない工場建屋を想定し、Tandemが既存の2D(2次元)の平面図から空間の構造を組み立て、設備台帳の表計算データの対応付けをAutodesk Assistantが提案した。