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設計者の“意図”を汲み取る「ニューラルCAD」が人間の創造性を解放する

「Autodesk University 2025」より

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2025年11月28日

製造業は今、リソース不足と需要増大という相反する課題に直面している。その中で期待が高まるのがAI(人工知能)技術の利用だ。3D CAD(3次元でのコンピューターによる設計)ソフトウェアなどを手掛ける米Autodeskも、設計者が考える設計意図から実用的な3Dモデルを自動生成する仕組みの開発を急ぐ。同社の年次イベント「Autodesk University 2025」(米ナッシュビル、2025年9月16日〜18日)での基調講演などから、どのような変化が起ころうとしているのかを紹介する。

 「生産性を高めるためのAI(人工知能)技術や機械学習モデルは自律性を増し、高度な推論能力を獲得しつつある。だが、既存ツールの性能を少しばかり高める線形的な技術進歩だけでは、深刻さを増すリソース不足には対処できない」--。米AutodeskのCEO(最高経営責任者)であるアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1:米AutodeskのCEO(最高経営責任者)であるアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏

 企業は今、労働市場の激動や世界貿易のひっ迫、国際紛争や環境問題によるサプライチェーンへの影響など、いくつもの経営課題にさらされている。さらに製造業は、さまざまな制約に加えて「これまで以上に多くを生産や新工場の建設を求める需要の増大に直面している」(アナグノスト氏)のが実状だ。

 需要が増大する一方で、それを支えるリソース(資源)不足が顕著になっている。アナグノスト氏は「資金も、建設する人材も、持続させる資源も十分ではない。限られた資源で、より多くの工場やインフラ、コンテンツを設計・製造できるようにしなければならない時代が訪れている」とする。

あいまいな指示から編集可能な3Dモデルを生成

 アナグノスト氏はさらに「生産性に加え『創造性の制約』を取り払い、人間のキャパシティ(能力)を解放しなければならない」と訴える。「モデリングなどの繰り返し作業はAI技術に任せ、人間は、さまざまな選択肢を試行錯誤し、より良い意思決定につなげる探索に集中する必要がある」(同)として、Autodeskは「ニューラルCAD」の構想を打ち出した。

 ニューラルCADについて同社 リサーチ部門 シニアバイスプレジデントのマイク・ヘイリー(Mike Haley)氏は「40年間続けてきたパラメトリックCADエンジンに、ディープラーニング(深層学習)をベースにした大規模AI基盤モデルを組み込む全く新しいCADになる」と説明する(写真2)。「ニューラル」には「大まかな指示や単純なパラメーターなど、人間の思考や直感といった“あいまいな”意図を直接扱い推論するという意味を込めている」(同)

写真2:Autodesk リサーチ部門 シニアバイスプレジデントのマイク・ヘイリー(Mike Haley)氏

 ニューラルCADを使った設計は「厳格なコマンドやUI(User Interface)を使ったデータの入力ではなく、設計者の意図からスタートする」(ヘイリー氏)。自然言語やラフスケッチ、点群データ、2D(2次元)の図面など「設計者にとって最も自然な方法で自身の設計意図を入力すれば、AI技術が解釈・推論し最適な3Dモデルをリアルタイムに生成する」(同)という。

 パラメトリックCADは、設計者がマウスとキーボードを使い、寸法や拘束、関係性といったパラメーターを1つひとつ定義し、形状を構築していく手法である。だが「ルールに厳密に従うアプローチのため時間と手間がかかる。特に設計の初期段階では最適解の探求を妨げる要因にもなってきた」とヘイリー氏は話す。

 これに対しニューラルCADでは「大まかな形状変更といった直感的な入力に対しても、AI技術が最適な形状や構造を生成する」(ヘイリー氏)。生成する3Dモデルは「単なる画像や使い捨てのメッシュデータではなく、後工程で編集可能なCADジオメトリそのもの」(同)だからだ。生成のための学習モデルには「大量の設計データや物理法則、製造プロセスを投入している」(同)という。