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トヨタも舵切るオープンイノベーション、日本発MaaSは成功できるか?

SAP NOW、オープンイノベーションのパネルより

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2018年8月20日

2人乗り自動車「rimOnO」、熱い気持ちがイノベーションを生む

 rimOnOは、2人乗りの超小型モビリティの開発に取り組む、ものづくりベンチャーである。2013年1月に国土交通省が創設した「超小型モビリティ」制度をきっかけに起業し、コンセプトづくりから着手。1年8カ月後の2016年5月に試作車「rimOnO」を発表し、国交省や経済産業省において試乗会も開いている。

 社長の伊藤氏は経産省の出身。種々の産業活性化策を立案・施行していくなかで、「自身が、ワクワクするモノづくりにチャレンジしたいと考えるようになった。どうせなら、かわいいクルマを作りたいと思いった」(伊藤氏)と起業のきっかけを話す。実際rimOnOは、ボディーの外装は布製で、ソファーのような構造を持っている。

写真3:rimOnO(リモノ)代表取締役社長の伊藤 慎介 氏

 布製ボディーなどの開発経験から伊藤氏は、「イノベーションは科学反応だ。高い熱量を持つ人、やる気のある人が集まれば、新たな結びつきが自然に発生し、物事は、あっという間に進む」と語る。

 たとえば、素材などを開発している企業にしても、「新素材については、どう使えば良いのかは開発した側でも分からない。想像や市場調査などに頼るだけでは、実態から外れた方向に進みかねない。だが、ベンチャー企業のように使い道がはっきりしているところと組めれば、研究のための研究ではなく、出口が見える研究になる」(伊藤氏)という。

 そうした化学反応を起こすには、まずは「本当の会話、ディスカッションが必要」と伊藤氏は指摘する。そのディスカッションが「具体的な形につながり、それを実現しようと自然に社内外を横断的に動くようになる。イノベーションは、1人ひとりの熱意の後に着いてくる」(同)と強調する。

 ただ現時点では、rimOnOの開発は停止している。その理由を伊藤氏は、「モビリティのイノベーションにおいては日本の環境は良くない。規制の壁も大きく、ものづくりベンチャーに向けたリスクマネーも少ないためだ」と説明する。「このままでは世界のモビリティーのイノベーションから遅れを取ってしまう」とも訴える。

欧州発で自動車部品の次を考える積水化学

 クルマからモビリティへの変化は、自動車部品などを提供する素材メーカーへも影響する。積水化学の林氏は、「未来のモビリティが求める部品としては、これまでの環境と安全、あるいは自動運転への対応だけでは普及しない。快適さやデザインといった要素への対応が大切になる」と指摘する。

写真4:積水化学工業 高機能プラスチックスカンパニー自動車・建築材料マーケティング部グローバルマーケティングダイレクター(欧州)の林 巧氏

 その例として林氏が取り上げたのがルーフ(屋根)。すでに「サンルーフからパノラマルーフへ進化してきている。将来は、全面ガラス構造といったクルマも登場するだろう。そうなるとガラスに対し、ボディーと一体感のあるシームレスなデザインに加え、遮熱といった機能も求められるようになる」と予測する。

 安全・自動運転の側面からも「センシングの方向も現在の前方中心から360度へと変わってくる。コネクテッドカーとしての通信機能も不可欠になる。そこでは、ガラスに対して、センシングのためのレーザー光などを遮らない機能も求められてくるだろう」(林氏)とし、ルーフが単なるルーフにとどまらない可能性を示唆する。

 さらに車内に目を向ければ、異なる要件が浮上する。林氏は「自動運転のレベル3(特定環境下で自動運転)では、パッセンジャー(乗り手)としての快適性が必要になる。レベル5(完全自動運転)になれば、車内はリビングルームのようなコンセプトに変わり、エンターテイメント性やリラクゼーション性などが求められるようになる」とした。